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企業の両立支援に対する取り組み状況
●  両立支援を会社は効果ありと前向き評価
  2005年の次世代育成支援推進対策法の施行や労働力不足を背景に、家庭と仕事の両立支援施策に力を入れる企業が増えてきた。その実態を調査した報告書が独立行政法人労働政策研究・研修機構によってまとめられた。
  まず企業に両立支援を行う目的をたずねると、「法で定められている」(85.5%)、「企業の社会的責任を果たす」(72.8%)、「女性従業員の定着率を高める」(63.3%)、「女性従業員の勤労意欲を高める」(59.6%)、「採用で優秀な人材を集める」(45.0%)、「従業員の仕事の満足度を高める」(44.3%)、「女性従業員の帰属意識を高める」(40.4%)と続く。女性社員の採用・定着・モチベーションアップを目的としている企業が多い。
  では、両立支援施策が従業員に対して、どのように効果があったかを尋ねると、「大いに効果があった」という回答が最も多かったのは、「女性従業員の定着率」が33.5%である。働き続けやすくなったということであろう。以下「企業の責任を果たす」が24.5%、「女性従業員の帰属意識を高める」が22.9%、「女性従業員の勤労意欲を高める」が22.8%、「顧客に対するイメージアップ」が19.5%、「採用で優秀な人材を集める」が18.6%、「従業員の仕事に対する満足度を高める」が18.1%と続く。
  企業としては効果ありという認識だが、実際の職場ではどうだろうか。管理職に対する設問で、部下が育児休業を取得した際の状況について尋ねている。そのときの職場の反応は、「積極的に支援する雰囲気」が42.9%だが、「会社の制度なので仕方ない雰囲気」が43.1%と拮抗しており、職場は両立支援に温かいとはいえない。
  なお、育児休業を取得する部下の仕事の引継ぎ方法については、「複数の社員に引き継いだ」が57.6%で過半数を占める。「新たにパート・派遣を採用した」が26.7%、「別の一人の正社員に引き継いだ」が13.2%となっている。
●  両立支援に対して現場はやや否定的
  職場の雰囲気は育児休業に対して決し温かいとはいえないが、「自社が育児休業を取りやすい環境にあるか」については、管理職は「そう思う」と「ややそう思う」を合計した肯定的な評価は44.3%、「そう思わない」と「あまり思わない」を合計した否定的な評価は26.4%となっており、肯定的な評価が多い。
  しかし同じ設問を管理職ではなく、一般社員に対して行うと肯定的な評価は37.1%、否定的な評価は36.1%で否定的な評価が増えている。
  同様の傾向は他の設問に対しても見られ、「自社は短時間勤務をとりやすい環境にあるか」を管理職に問えば、肯定的な評価は24.2%、否定的な評価は38.5%であるが、一般社員は肯定的が18.4%、否定的が50.0%と、否定的な割合が管理職よりも増える。「結婚・出産後も働ける会社だと思うか」についても、管理職に問えば肯定的が59.52%、否定的が15.8%であるが、一般社員は肯定的が47.0%、否定的が24.1%と、やはり否定的な割合が管理職よりも増える。両立支援に対するスタンスは、企業は前向きであるが、職場・現場に行くほど、それが伝わっておらずまた一般社員はさめていることが分かる。
出所:独立行政法人労働政策研究・研修機構「仕事と家庭の両立支援にかかわる調査」
(可児 俊信 ベネフィット・ワン ヒューマン・キャピタル研究所所長、千葉商科大学会計大学院教授、
CFP®、米国税理士、DCアドバイザー)
2007.03.12
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