>  今週のトピックス >  No.1401
企業の8割で過去3年における育児休業制度の男性利用ゼロ
●  法定以上の制度を取り入れても、あまり効果なし
  独立行政法人労働政策研究・研修機構が行なった「仕事と家庭の両立支援にかかわる調査」によると、約8割の企業で育児休業制度を利用した男性社員が過去3年間で1人もいないことが分った。
  この調査は、企業の仕事と家庭の両立支援の動きを明らかにするとともに、両立支援が従業員の定着率や勤労意欲、パフォーマンスに与える影響を解明することが目的。昨年6月〜7月、従業員数300人以上の企業6,000社の人を対象に実施され、企業863社、管理職3,299人、一般社員6,529人から回答があった。
  育児休業制度は、法律により企業に導入を義務づけている制度である。今回の調査でも、育児休業制度を導入している企業が98.6%に達し、従業員2,000人以上の企業では、6割近くが法定を超える制度を取り入れている。こうした状況にもかかわらず、男性社員の育児休業制度の利用が皆無に等しいのは、残念な結果である。各企業も今後は調査結果を受けて雇用環境や企業体質を改善するためにさまざまな工夫が求められるところである。
●  管理職からみた男性部下の育児休業、一番の課題は「代替要員確保が困難」
  男性社員の育児休業制度に関する調査項目を見てみると、男性の部下が育児休業を申し出た場合は、「積極的に賛成する」と答えた管理職は21.6%であり、「課題はあるが、賛成する」という消極的な賛成が52.7%と過半数に上った。他にも「職場の状況を踏まえて慰留する」が17.0%、「男性が育休を取るなど考えたことがなく、反対」が5.0%となっており、消極的、否定的意見が大部分を占める結果であった。
  こうした背景には、育児休業制度の導入に対する企業の姿勢にも表れている。企業調査で仕事と家庭の両立支援に取り組む理由を尋ねたところ、「法で定められているから」が85.5% と最も多く、次いで、「企業の社会的責任を果たす」(72.8%)、「女性従業員の定着率を高める」(63.3%)、「女性従業員の勤労意欲を高める」(59.6%)となっている。
  企業は、コンプライアンスやCSR、そして、女性社員の定着や意欲向上を目的として育児休業制度を導入しており、男性社員の制度利用を目的として導入しているわけではないことがうかがえる。また、男性の育休取得に向けた課題を複数回答で管理職に尋ねたところ、半数を超える63%が「代替要員確保が困難」と答えている。
  このような管理職の気持ちを知っているので休みにくいという男性もいるだろうし、企業によっては、育児休業を申し出るような雰囲気ではないというところもあるだろう。いずれにしても複数の要因が関係しているので、小手先の工夫で男性の育児休業制度の利用促進は難しいというのが現状ではないだろうか。
●  男性にも育児休業を積極的に取得するように勧めている企業は、3割に満たない
  男性の育児休業制度の促進には、経営者と働く人の意識の改革が必要である。経営方針として「男性にも育児休業を積極的に取得するよう勧めている」企業が28.4%で3割に満たない。また、育児休業の促進について、経営トップの方針と管理職・一般社員との間で、認識にズレも見られる。まずは、こうした認識のズレをなくし、全社一丸となって促進に取り組むことが必要であろう。また、企業だけでなく政府としても、育児休業を細切れで取得できるように変えるなど使い勝手が良い制度にしていただきたいものである。
出所:独立行政法人 労働政策研究・研修機構「仕事と家庭の両立支援にかかわる調査」
(http://www.jil.go.jp/press/documents/20070226.pdf)
(庄司 英尚、株式会社アイウェーブ代表取締役、庄司社会保険労務士事務所代表、社会保険労務士)
2007.03.12
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