>  今週のトピックス >  No.1404
期首に行う1年先の決算対策
●  期首に行う決算対策
  前回(今週のトピックスNo.1400)は3月決算法人を対象に、期末直前に行うべき決算対策をご紹介した。
  今回は、その姉妹編として期首に行う決算対策についてご説明したい。
●  期首における役員報酬の設定
  まずひとつ目として、役員報酬の設定が挙げられる。
  これまでは、期中に役員報酬を変更することに関して、税務署も比較的柔軟な対応を取ってきた。もちろん取締役会議事録などを残すなどという手続きは必要だったが、その手続きを踏んでいれば、実質的な利益調整ともいえる役員報酬の期中増額についても、税務調査では大目に見てもらい、何とか切り抜けてこられた。
  しかし昨年の税制改正により、役員報酬の損金算入条件として「定期同額給与」であることが明文化され、期中は役員報酬の変更が原則禁止とされた。
  そのため、3月決算法人が役員報酬を変更するには決算後の4〜6月に実施しておく必要がある。そこで決定した役員報酬は1年間継続適用となる。当期1年間の利益予測に基づいて、適正な役員報酬を設定することが今後は重要になってくる。
●  事業年度変更を利用した決算対策
  もうひとつ、期首に検討できる項目として「事業年度変更」がある。
  例えば、これまでずっと3月決算でやってきた法人にとってはそれが当たり前になっており、改めてなぜ3月決算なのかということを考えることは少ないかもしれない。
  しかし個人と違い、法人は事業年度を自由に設定できるため、それが意外に決算対策として有効な場合がある。
●  事業年度の決め方
  上場を目指した会社や一定規模以上の会社になると、節税のみで事業年度を決定すべきではないため、一概にはいえないが、ほかの要素を度外視し、節税のみを最優先に考えた場合、事業年度を決定する際の考え方の基本は、利益が最も大きい月を期首にもってくることといえる。これはその逆を考えてみると分かりやすい。期末に最も利益が出る法人の場合、決算直前に利益が急増し、決算対策をする暇もなく多額の税金を納税しなければならない。それを避けるためには、期首に最も利益が出るという形が望ましい。
●  平成19年度税制改正対策
  また事業年度変更は、税制改正と絡めて考えてみても有利になるケースがある。
  現在国会で平成19年税制改正が審議中だが、税制改正の実施時期は通常「4月1日以後開始事業年度」からとなる例が多い。
  例えば「特殊支配同族会社の役員給与損金不算入」の適用除外要件は、この改正で基準所得金額800万円以下から1,600万円以下に引き上げられる予定であるが、これも現在のところ「平成19年4月1日以後開始事業年度」より適用されることになっている。
  この改正案がそのまま採用されたと仮定した場合、2月決算法人でこの規定の対象になる法人を例に考えてみると、基準所得金額が1,600万円以下(800万円超)という要件を満たしていたとしても、「平成19年3月1日開始事業年度」では適用除外要件はまだ800万円基準が適用されるため、増税対象となる。
  そこでこの法人が事業年度変更を実施し、4月1日から3月31日までの事業年度に変更した場合、新事業年度では1,600万円基準により適用除外となるため、増税対象となる事業年度は平成19年3月1日から3月31日までの1ヵ月で済むことになる。
  もちろん、事業年度変更は本来節税の観点からのみ行うものではないので、最終的には総合的な判断の下で行っていただきたい。
(村田 直 マネーコンシェルジュ、今村仁税理士事務所)
2007.03.19
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