>  今週のトピックス >  No.1462
世界同時の金利上昇、米国が発端
●  景気減速懸念が米国で後退
  日米欧などで金利が上昇(債券の価格は下落)する「世界同時金利上昇」ともいうべき事態が起きている。米国の景気減速懸念が後退したことをきっかけに、米国の長期金利が上昇。それにつられるように日本の長期金利も2%に限りなく接近した。金利が上昇すると、企業がお金を借りる意欲が減退して景気を冷やす可能性がある。個人にとっては預金の金利は上がるが、住宅ローンなどの負担は重くなる。
  「今週のトピックス」No.1414でも指摘した通り、日本の長期金利はかなり低水準で推移してきた。日銀が2月に利上げしたものの、日本の景気は特に過熱していなかったからだ。世界経済をリードする米国では、景気の減速感を示すデータが多く出て、3月半ばには長期金利が4.5%まで低下していた。米国金利の影響を受けやすい日本の長期金利も同じころ1.5%台まで下げていた。
●  6月に潮目変わる
  潮目が変わったのは6月上旬。米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ議長が「1-3月期の低成長は一時的な要因」と述べ、4-6月期以降は成長率が持ち直す見通しを示した。5月の企業の景況感指数も大きく改善し、利下げ観測が急速にしぼんだ。長期金利はほぼ1年ぶりに節目の5%を突破し、一時5年ぶりとなる5.3%台まで上昇した。これにつられるように欧州も5年ぶり、日本は1年ぶりの高水準まで上昇している。
  長期金利が上昇すると経済にはどのような影響が出るのであろうか。あるシンクタンクの試算だと、長期金利が1%上昇すると企業の経常利益が3.5%減少するという。金利が上昇すると借入金の支払利息が増えるため、大半の企業には減益要因となり、借入金の多い中小企業ほど影響が大きい。
●  住宅ローンの負担増など影響じわり
  個人への影響はまず、定期預金の金利が上がることだ。一部の金融機関がすでに金利引き上げに動いている。金利上昇が続けば、契約時に一括で保険料を支払う貯蓄性の高い「一時払い型」の養老保険や終身保険で、新規契約者の保険料を安くする可能性がある。一方で住宅ローンは負担が重くなる。
  日本の債券市場では日銀の次の利上げが、参院選後の8月にあるのではという観測が広がっている。利上げがあれば、長期金利にも上昇圧力として働く場合が多い。日銀の金融政策にますます注目が集まりそうだ。
2007.06.25
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