>  今週のトピックス >  No.1575
入社半年間での新入社員の意識の変化
●  強まるコンプライアンス意識
   昨年(2007年)の新入社員に対して、さまざまなビジネスシーンに関する意識調査を紹介(今週のトピックスNo.1235)したが、今回同じ新入社員に再度同じ設問で調査を行い、入社半年間での意識変化をみた調査結果が報告された。
   半年間で回答率が変動したビジネスシーンでの設問を、その変動の大きな順に紹介する。もっとも大きく変動した設問は、「職場でコンプライアンス上問題ある事態があるが、上司が動いてくれない」場合に、「もうひとつ上の上司に相談する」が48.9%から62.4%へ増え、「管理部門に相談する」が37.3%から19.6%へ減り、「分からない」が12.6%から16.7%となっている。
   管理部門への期待が弱まっているのは、他部署では当事者意識を持って対応してくれないのを半年にして理解したためかも知れない。2006年の新入社員に対しても同じ設問があるが、その際の半年間の変化率は「もうひとつ上の上司へ相談する」は8.2ポイント増えていた。今年は11.5ポイント増加しており、コンプライアンス意識の高まりがあるとみられる。
●  会社への期待は弱まる
   次に変動が大きいのは、「職場の飲み会と先約の学生時代の飲み会がぶつかった」場合、「職場の飲み会に出る」が入社直後は59.1%だったが、半年後には46.3%に激減。一方で「友人との飲み会に出る」が40.9%から53.7%に増えている。会社にも慣れて一通りの知識を得ると、会社の上司・同僚から得られる情報よりも他社の友人から得る情報の方が貴重と感じるのだろう。
  また「業務中にマニュアル以外の事態が発生した」場合は、「できるだけ自分で工夫する」が27.8%から35.2%と高くなり、逆に「先輩・上司に相談する」は72.2%から64.8%と低下している。仕事を通じて自分に自信がついたということだろう。
  これらの意識の変化に共通する要因には、会社に期待するものが薄くなったことがある。「職場で仕事を覚えられる、ビジネススキルを上げられる、上司が導いてくれる」ことよりも、「自分の力で仕事・スキルを切り開くしかない」ことに気付くのだろう。
●  半年間で高まる転職志向
   こうした気付きが、以下に述べるような意識の変化につながる。「キャリアプランに反する仕事を続けるのは意味がない」に対して「そう思う」が23.1%から33.1%、「そう思わない」が76.9%から66.4%。「条件の良い会社に移るのが得」に対して「そう思う」が29.5%から36.5%。「今の会社に一生勤めようと思う」が39.8%から29.2%へ低下する一方、「チャンスさえあれば転職しても良い」が39.7%から48.2%と増えている。また「出世より起業したい」が20.1%から25.7%とより上を目指した回答が続く。
   これらの回答は職場への期待がさめたことで、職場に依存しない考え方が身に付いた結果のようだ。こうしたことから、若者の転職志向の高まる根本原因は、若い社員の期待に応えられない職場・上司にあるのかもしれない。
出所:財団法人社会経済生産性本部「2007年度新入社員 半年間の意識変化調査」
(可児 俊信 (株)ベネフィット・ワン ヒューマン・キャピタル研究所、千葉商科大学会計大学院教授、CFP®、米国税理士、DCアドバイザー)
2008.01.21
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