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人材投資促進税制を活用しよう
●  人材投資促進税制が利用しやすくなる
   今週のトピックスNo.1568でもお伝えした通り、いよいよ平成20年度税制改正の方向性が見えてきた。その中でも個人的に特に注目しているのが、人材投資促進税制の拡充である。これまでは事実上あまり使えない制度だったが、今回の改正により利用できる中小企業が大幅に拡大する可能性がある。今回は、その「人材投資促進税制」について取り上げたい。
●  従来の人材投資促進税制
   まずは現行の人材投資促進税制の内容について見ておこう。基本的には一定の中小企業の場合、当期の教育訓練費の金額が過去2年平均の教育訓練費の金額(比較教育訓練費)を上回っていれば、以下の2つの税額控除のどちらか有利な方を選択できる。ただし、どちらの税額控除も当期の法人税額の10%が上限となる。当期の法人税額から控除しきれない分は、翌年に限り繰り越せる。

(1)増加教育訓練費の税額控除(全青色申告法人が対象)
    (当期の教育訓練費−比較教育訓練費)×25% を法人税額から控除
(2)中小企業者等の教育訓練費の総額に係る税額控除(青色申告法人である資本金1億円以下の中小企業等が対象)
    A=0.5×(当期の教育訓練費−比較教育訓練費)/比較教育訓練費
    当期の教育訓練費×A(上限は20%) を法人税額から控除

  つまり、いずれにしても税額控除を受けるためには、当期の教育訓練費が過去2年平均より増えていなければならず、それを計算するためには過去2年の教育訓練費も全て洗い出さなければならなかった。
●  税制改正大綱による改正内容
  それが先日発表された税制改正大綱によると、上記の現行制度の改正について以下のように触れられている。

(1)増加教育訓練費の税額控除
    平成20年4月1日以降開始事業年度より廃止
(2)中小企業者等の教育訓練費の総額に係る税額控除
    計算方法を以下の内容に変更
    B=8%+(教育訓練費/労働費用−0.15%)×40
    当期の教育訓練費×B(8%〜12%) を法人税額から控除

  この改正が実現すれば、教育訓練費が増加しているか否かに関わらず、労働費用の0.15%を超えていれば税額控除が受けられることになる。
  例えば、1人当たりの労働費用が450万円である場合、1人当たり年間6,750円以上の教育訓練費を支出すれば、税額控除の対象になる。
●  教育訓練費の具体的範囲
  最後に、教育訓練費の具体的な範囲についてまとめておきたい。
教育訓練費とは、使用人の職務に必要な技術や知識を習得させるため又は向上させるために支出する費用を指す。役員や役員の親族、使用人兼務役員、入社予定の内定者等に対するものは対象にならないが、パート、アルバイト、契約社員、派遣社員に対するものは対象となる。具体的な費用の内容は以下のようなものである。

(1)外部講師等への講師料、交通費、旅費等
(2)外部施設、設備等の利用料、賃貸料等(会議室・OHP・プロジェクター・ホワイトボード・パソコン・e-ラーニングのコンテンツ等)
(3)研修を外部教育機関等へ委託する場合の委託費用
(4)外部の研修に参加する場合の授業料・参加費・通信教育費・留学費等
(5)研修用の教科書・教材の購入費又は製作委託費等(ただし、使用可能期間が1年以上かつ取得価額が10万円以上の教材等は対象外)

※なお、今回の改正内容は、国会を通過するまでは正式な確定事項ではない。今後の国会審議動向により、内容が変更することがあるのでご了承頂きたい。
(村田 直 マネーコンシェルジュ税理士法人)
2008.01.21
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