>  今週のトピックス >  No.1607
障害者の雇用確保に向けた法改正
●  増加する障害者雇用
  厚生労働省が定める障害者雇用促進法では、56名以上の企業に対して法定雇用率1.8%を義務付けている。本トピックスNo.1551にあるとおり、2007年6月時点で民間企業の雇用されている障害者(身体障害者、知的障害者、精神障害者)は、30.2万人であり、前年比1.9万人(6.7%)増となっている。また年間の求職件数も1998年では7.8万件だったが、2006年では10.4万件に増えている。
  このように障害者の求職および就職件数は増加しつつあるものの、企業側の受け入れの状況はいまだ改善の余地がある。
  まず法定雇用率の分母となる民間企業の労働者数は1,950.4万人であるから、障害者の雇用率は1.55%となる。全体でみると法定雇用率には達しない(個別企業で見ると、43.8%の企業が達成している)。また障害者を一人も雇用していない企業は、法定雇用率未達企業の63.4%と過半を占めている。つまり企業によって、障害者雇用への取り組みに温度差が見られるということである。
●  企業規模による障害者雇用率格差
  企業規模別では、1,000名以上の企業では雇用率は1.74%と高く、500名以上では1.57%、300名以上では1.49%、100名以上では1.30%と、規模が小さくなるにつれて、雇用率が低下する。
  こういった状況をふまえ、厚生労働省は、指導を強化することとなった。これまでは雇用状況の報告を受けて、ハローワークが雇い入れ計画を作成する命令し、計画の実施状況が悪い企業には、実施の勧告を行い、さらに特別指導を行い、それでも実施しない企業は実名を公表してきた。
●  法改正で雇用を促進
  さらに障害者雇用を促進するために、2009年4月から同法の改正を予定している。
  まず障害者雇用納付金制度の対象となる企業の規模を引き下げる。この制度は法定雇用率に達しない企業から納付金を徴収し、達成した企業に調整金を支給する制度である。現行は301名以上の企業に対してのみ適用されているが、猶予期間(当分の間は201名以上を対象とする)はあるものの最終的には101名以上の企業にまで適用を拡大するものである。これによって、中小企業における障害者雇用を促していく。
  さらに法定雇用率の算定に当たって、常用労働者だけでなく短時間労働者の数も雇用率算定の分子・分母に加えることとする。これにより短時間の勤務を望む障害者が雇用されやすくなる。しかし企業にとっては分母となる労働者数に短時間労働者も含まれることからパートタイマー等の多い業種では法定雇用率の達成が難しくなると見られる。
出所:厚生労働省「平成19年6月1日現在の障害者の雇用状況について」
「障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律案について」
(可児俊信 千葉商科大学大学院教授、(株)ベネフィット・ワンヒューマン・キャピタル研究所、CFP®米国税理士、DCプランナー)
2008.03.17
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