現在、税務上費用計上可能な役員給与は、大きく3つの区分に分かれます(図1参照)。1つは「定期同額給与」といわれるもので、原則毎月定額支給される役員給与を指します。これが今、中小企業では一番利用されている役員給与の形態でしょう。
この定期同額給与では、期中は原則役員給与の額を変更することができないのですが、例えば12月決算の会社であれば、1〜3月の間に改定することは税務上認められることになっています。つまり、「その事業年度開始の日の属する会計期間開始の日から3カ月経過日までに改定された場合」には、その前後で役員給与の額が一定であれば、その変更はOKということになっています。
ということは、決算申告時に今期の役員報酬をいくらにするか、事業計画などに基づいて検討する必要があるということです。逆にいうと、3カ月経過してしまうと、もうその期においては原則役員給与の額を変更することができないことになります。この役員給与額の検討は、現在では決算時の要チェック項目となっています。
また2つ目の役員給与の形態は、「事前確定届出給与」といわれるものです。この事前確定届出給与は、事前に役員給与の支給時期と支給金額を確定させておいて、さらにその内容を税務署に届け出ることが必要となります。今までは、盆暮れに役員に対して賞与を支給した場合、原則その全額が税務上費用計上不可となっていました。それが、この事前確定届出給与に該当すると、盆暮れの役員に対する賞与も税務上費用計上が可能となります。ただし、事前に税務署への届出が必要となりますので、ご注意ください。また実際中小企業では、その事務処理の煩雑さなどから、その賞与額を毎月の役員給与に平均して加算して「定期同額給与」の形態で支給しているところが多いと思われます。
最後の役員給与の形態は、「利益連動給与」といわれるものです。この利益連動給与とは、同族会社以外の会社が、客観的な利益に関する指標をもとにその利益に連動して役員給与を支払った場合(他に要件有り)に、税務上費用処理を認めるというものです。これはその適用要件などが厳しいため、中小企業での利用はほとんどないようです。
今日の話が少しでも皆さんのお役に立つことができれば、幸いです。