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知ってビックリ!年金のはなし
第9回 社会保険事務所の相談、FPの年金相談
 
年金相談をしていると
 年金相談をしていると、具体的な年金額をお知りになりたいということでお客様がこられることがあります、でいろいろとご説明をするのですが、たまに「正確に年金額がわからないのか?じゃあ来た意味がないじゃないか?」と言われて帰られるお客様がいらっしゃる。
 社会保険庁が58歳時点で年金履歴を送付、それに伴い見込み額を送付するというサービスを始めたおかげで、こういうお客様は減りましたが、まだ少ないけれどたまにこういう方がいらっしゃいます。
個人の記録や情報は社会保険事務所でしかわからない
 年金相談をしている人が年金を勉強しているからといって、お客様の年金額がわかるわけはありません。ご承知のように、年金額はその方の年金の加入履歴がわからないと計算できないものです。税理士が会計帳簿がないのに税金の計算ができるのか?というのとまったく同じ。そしてその履歴は社会保険庁が管理しているために、社会保険事務所や年金相談センターでないとわからないものです。
 もちろん、履歴等のデータがあれば、年金相談を業としている人なら、電卓なりパソコンなりで年金額を計算できるスキルは持っています。
 しかし、そんな面倒なら、最初から社会保険事務所なり相談センターなりで、具体的な年金額を出してもらったら終わりじゃない、役所以外で年金相談をする必要があるのか? そういう疑問がでてきます。
社会保険事務所でできることできないこと
 以前、ある社会保険事務所の職員の方の話を人伝に聞きました。
 その方は、繰り上げ支給を希望される方に私がしたような説明(第5回をご覧ください。女性の場合86%の確率で繰り上げ支給は不利になるということを書きました)を原則していたそうです。ところが、相談者から役所あてにクレームがあり、以後そういう踏み込んだアドバイスは控えるようにと注意されたとのこと。お客様にはいろいろな方がいらっしゃいますから、繰り上げを強く希望する人にとって、窓口で自分に不利なことを説明されること自体が逆に耳障りだったのでしょうか。
普通に社会保険事務所で説明されている繰り上げ支給とは
 この前社会保険事務所に行っていた時、隣の相談ブースからの声が漏れ聞こえてきましたが、その内容は繰り上げに関するものでした。

「結局、損得で考えるとどうなるんですか?」
「ええ、それは、お客さんの寿命次第です。60歳繰り上げ支給をされる場合76歳8ヶ月で類型受取額が均衡し・・」

よく聞く一般的な説明です。65歳から貰える年金を60歳から貰うと、累計の受取額が均衡するのは、76歳と8ヶ月。それ以前に死亡した場合は繰り上が有利、それより生きた場合は、普通に受給したほうが有利、その説明内容に全く間違いはありません。
確率を明示しないと正確ではないのではないか?
 しかし、説明したように76歳8ヶ月前に死亡する確率はとても低い。それなのにその確率に触れず死亡したら得、生きたら損というような択一的な説明をするだけだと、あたかも76歳8ヶ月までに死亡する確率と、76歳8ヶ月を超えて生存するという確率が同じだという風に聞いている人が誤って理解をしないでしょうか?繰り上げをすると何が不利になるかを説明するのは当然として、それに加えて発生確率もきちんと説明してあげるのが正しい方向付けだと思うのですが。
FPに期待されること
 単純に年金見込み額を聞いたり、履歴を確認したりするのであれば直接社会保険事務所に出向いて資料をもらうのがベストですし、われわれもそうアドバイスします。
 しかし、FPとしての仕事はこれからです。
 先ほどのような、有利、不利の詳細なアドバイスが社会保険事務所という立場上、詳しくできないならば、われわれが積極的にアドバイスをしてあげる必要があります。最終的な決断はお客様がされるのですが、その判断材料を、一歩も二歩も踏み込んだ形で提供、アドバイスができるのがFPの強みであり、そこに存在意義があると思います。
 繰り上げ支給をされた方は多いかもしれませんが、実はもっと丁寧に説明されたら本当に、繰上げされたかな? と思う方も多いのです。もっともっと年金に詳しいFPが増えてきたら、後悔する年金選択も減るのではないかな。そう思います。

 年が明けて最初なのでちょっと偉そうに書いてみましたが、今年もよろしくお願いいたします。
2007.01.23
執筆者:桶谷 浩
[経歴・バックグラウンド]
大学卒業後、生命保険会社に勤務その後退職し、学習塾等に勤務
2001年社会保険労務士として独立開業
2002年FP登録(AFP、後CFPに)
現在、公的年金を中心に据え、成年後見・介護制度を併せて、広く老後の生活設計を考えるというテーマで、相談業務、講演、執筆など活動中。

2007年4月に合同会社電脳年金を立ち上げ。
[保有資格]
社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー(CFP)、行政書士
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