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  生命保険の契約時、保険契約者(または被保険者)は告知書を記入します。告知書を介して商法上の告知義務を果たしているのです。もちろん、これには診査医からの質問に答える口頭告知も含まれます。
  生命保険会社が高額死亡保障を中心に販売していたころは、社医や嘱託医による診査が中心だったので、お客さまがあいまいな告知をしても診査医の先生が上手に既往症の病状を聞きだしてくれて、お客さまも正確な病名を思い出し告知することができていたのではないでしょうか。2001年以降の規制緩和による金融の自由化で、死亡保障保険の小口化、生損保による医療保険単品とがん保険の販売など、診査扱いではなく告知書扱いが主流となり、告知書の様式も各社ごとに多様化し現在に至っています。

■「自発申告義務」から「質問応答義務」へ

  さて、告知書の質問表で聞かれていない事項についてはたとえ悪意または重大な過失による不告知があっても、告知義務違反にはならないと考えられています。しかし商法では、告知をする側には重要事実を自発的に申告する義務があるとされていました。
  重要事項とは、当該契約の締結の可否または契約条件の決定に通常影響をおよぼすと認められる事実をいいます。しかし実際には、具体的に何が重要事実で何がそうでないかをお客さまが自ら判断することは困難です。よって4月1日から施行される保険法では、告知義務に関して「自発申告義務」から「質問応答義務」へと変更されました。つまりお客さまは、告知書に記載された事項についてのみ回答すれば足りることになりました。
  これを受け、4月には大部分の保険会社が「限定病名列挙方式」による告知書へ改正すると思われます。この限定病名列挙方式とは、複数の病名が告知書に記されていて、お客さまはその中から自らの現症・既往症に該当するものについて答える方式です。下表はその一例です。
  各保険会社の告知書に列挙されている病名は、それぞれ保険会社が重要な疾患と考えているものです。したがってこの質問表に記載されている病気について告知しないことは告知義務違反と見なされることになります。次回からはこの表に記載されている病気を一つずつ取り上げて告知の書き方のポイントを解説していきます。

限定列挙疾患(例)
脳・神経・精神 脳内出血、脳こうそく、くも膜下出血、
統合失調症、そう・うつ病、心身症、神経症、パニック障害、自律神経失調症、
アルツハイマー病、パーキンソン病、ノイローゼ、てんかん、
慢性アルコール中毒、不眠症、知的障害、認知症
目・耳・鼻 白内障、緑内障、ぶどう膜炎、角膜炎、円錐角膜、角膜かいよう、網膜色素変性症、
網膜はく璃、眼底出血、中耳炎、メニエール病、突発性難聴、
ちくのう症(副鼻腔炎)、鼻中隔湾曲症
心臓・血圧 高血圧、狭心症、心筋梗塞、先天性心疾患(心臓病)、心筋症、不整脈、
大動脈りゅう、心臓弁膜症、心雑音
肺・気管支 ぜんそく、慢性気管支炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支拡張症、
肺気腫、肺結核、じん肺、過換気症候群、バセドウ病
胃腸・すい臓 胃かいよう、十二指腸かいよう、急性すい炎、慢性すい炎、
腸へいそく、クローン病、かいよう性大腸炎、過敏性大腸炎
肝臓・胆のう 急性肝炎、慢性肝炎(肝炎ウイルスキャリアーを含む)、肝硬変、肝機能障害、
胆石、胆のう炎
腎臓・尿管 急性腎炎、慢性腎炎、ネフローゼ、腎不全、のう胞腎、水腎症、腎臓結石、
尿管結石、前立腺肥大
婦人科系 子宮筋腫、子宮内膜症、卵巣のう腫、乳腺症、不妊症
がん・しゅよう がん、肉腫、白血病、しゅよう(上皮内がんを含む)、ポリープ、異形成
その他 糖尿病、脂質異常症(高脂血症)、高尿酸血症(痛風)、リウマチ性疾患、
こうげん病、貧血、紫斑病、甲状腺腫、甲状腺機能亢進症、甲状腺炎、
変形性関節症、椎間板ヘルニア、痔、関節リウマチ
 
● 著者プロフィール
上田 香十里
株式会社 査定コンサルティング代表取締役。
新卒で外資系生命保険会社に入社、引受査定者として約10年間勤務。
退職後、情報処理専門学校に入学し、病院向け介護保険レセプトソフトを自ら開発し、販売まで手掛ける。
その後、IT業界で勤務するも、2006年に再び保険会社に戻り、実務経験を積んだのち、2008年独立。
現在は、保険会社の査定業務支援や営業支援、関連セミナーなどを行っている。