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「平成22年度税制改正速報」
マネーコンシェルジュ税理士法人
代表税理士 今村仁

はじめに
  皆さまご存知のように、今までの自民党中心から民主党を中心とした政府へと、政権交代が行われました。それにともなって、税制改正においても大きな影響が生じました。
  新政権では、支え合う社会を実現するとともに、少子高齢化など経済・社会の構造変化に適応し、国民が信頼できる税制を構築する観点から、抜本的な税制改正の第一歩として、「控除から手当へ」として扶養控除の見直しや納税者視点に立った租税特別措置等の見直し、「新しい公共」を支える市民公益税制の拡充等が講じられています。また、税制の三原則として、「公平・透明・納得」を掲げています。
  租税特別措置の見直しなど喧々諤々の議論もありましたが、結局は総じて減税措置が目立つ内容(減税措置の延長を含む)となったように思われます。これは、目下の経済状況に鑑みての緊急措置的な対応と思われます。目玉項目の1つである扶養控除の見直しにおける増税措置も、子ども手当の創設や高校実質無償化を考えると家計として負担減となるケースが大半です。
  逆に気になるのは、国の財政事情です。12月22日に税制改正の閣議決定がなされましたが、その3日後の12月25日に閣議決定された「2010年度予算案」では、当初予算過去最大の92.3兆円で、歳入の半分を将来の負担増となる国債で調達しています。さらには、それでも足りない不足分をいわゆる埋蔵金で穴埋めしています。今回の税制改正大綱でも冒頭の経済・社会構造の変化で、「最も大きな変化は、人口減少と高齢化が同時進行する社会への突入」と記しています。これは、世界初の現象で周囲を見渡しても模範となる国はありません。日本に限っていうと、マーケットは確実に縮小していきます。マイナス成長の中で、いかにうまく経済運営をしていくのか、いかに幸せを感じられる社会を構築できるのかを世界に指し示していくことが今の日本には求められています。その中で膨張する予算というのは、いかがなものかと感じずにはいられません。
  これに対しては、税制改正大綱の「鳩山政権での対応」という項目で、『「未来への責任」という観点から、膨大な国債の発行・累積は未来を担う子どもたちにツケを回すものであるとの意識を持って、中長期的な財政健全化に取り組みます。まずは事業仕分け、特別会計の見直し、徹底的な行政改革、「コンクリートから人へ」など、税金の無駄遣いの徹底的な排除と予算の総組み替えを進めていきます。さらに、来年前半には、中長期的な財政健全化への道筋を明らかにします』としています。2010年前半の中長期的な財政健全化の道筋に期待します。
今回の内容は、国会を通過するまでは正式な確定事項ではありません。今後の国会審議動向などにより、内容
が変更することがありますのでご了承ください。
原稿執筆:平成21年12月30日
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