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第1章 納税環境整備
●  1−2 税務調査手続(事前通知の法制化及び調査終了時の手続)
1. 税務調査の事前通知について、調査手続の透明性と納税者の予見可能性を高める観点から、次のとおり明確化・法制化を図ります。
(1) 全体構成
原則として、税務調査を行う場合には、あらかじめ事前通知を行います。ただし、調査の相手方となる納税者等に関する情報、その納税者等が営む事業内容に関する情報その他税務当局の保有する情報に鑑み、税務署長・国税局長・国税庁長官(以下「税務署長等」)が次に掲げるおそれがあると認める場合は、事前通知を行わないこととします。
@正確な事実の把握を困難にするおそれ
A違法若しくは不当な行為を容易にし、又はその発見を困難にするおそれ
Bその他国税(条約相手国の租税を含みます)に関する調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれ
また、上記の例外事由の具体例を通達に記載することとします。
(2) 通知の対象者、内容、方法等
@対象者
事前通知の対象者は、納税者本人、調書提出者及びその代理人(税理士(税理士登録を行った弁護士及び公認会計士を含みます)、税理士業務を行うことを国税局長に通知した弁護士)、反面先とします。
A内容
通知内容は、次のとおりとします。
(イ) 調査の開始日時・場所
(ロ) 調査の目的(例:○年分の所得税の申告内容の確認等)
(ハ) 調査対象税目、課税期間
(ニ) 調査の対象となる帳簿書類その他の物件(例:所得税法△△条に規定する帳簿書類)
(ホ) その他必要事項
・調査の開始日時・場所の変更の申出に関する事項(合理的な理由を付して日時・場所の再設定を求めることができる)
・調査状況に応じ、通知内容以外について非違が疑われる場合には、その通知内容以外の事項についても調査対象となりうること
・その他
  調査の相手方の氏名及び住所(法人については、名称及び所在地)
  調査を行う主たる担当者の氏名及び所属
B方法
通知方法は、次のとおりとします。
(イ) 原則として、文書で事前に行います。
反面調査については、反面先には、調査対象者(納税者)の名称及び確認対象取引は通知しないこととします。また、調査対象者本人には通知しないこととします。
(ロ) ただし、調査の相手方の同意がある場合は、例外的に実地の調査当日に文書を交付することができることとします。
(ハ) 事前通知を行わない例外事由に該当する場合は、調査着手後、終了時までに上記の通知事項(日時・場所の記載を除きます)を記載した文書を交付します。
C対象となる調査
対象となる調査は、実地の調査(納税者の事業所、事務所等に臨場してする調査)とします。

2. 調査終了時の手続については、課税庁の納税者に対する説明責任を強化する観点から、次のとおり明確化・法制化を図ります。
(1) 更正・決定等すべきと認められる場合
@実地の調査により更正・決定等すべきと認められる場合には、課税庁の職員は、その納税者に対し、
(イ) 調査結果(非違の内容、金額、理由)、及び
(ロ) 「修正申告又は期限後申告を行った場合にはその部分について不服申立てができないこと」等を説明します。
A課税庁の職員は、納税者に対し、上記(イ)及び(ロ)を簡潔に記載した税務署長等名の文書を交付します。
Bその際、課税庁の職員は修正申告又は期限後申告の勧奨を行うことができることとします。
C税務署長等は、納税者から修正申告書又は期限後申告書の提出があった場合には、その納税者に対し、その調査が終了した旨の通知書を交付します。
D税務署長等は、更正・決定等をするときは、その調査が終了した旨の通知書を交付します。
Eその納税者に代理人がいる場合で、本人の同意があるときは、上記@からDはその代理人に行えば足りることとします。
Fなお、実地の調査以外の調査の場合には、上記文書及び通知書を納税者からの求めに応じて交付します。
(2) 更正・決定等すべきと認められない場合
実地の調査終了後、更正・決定等すべきと認められない納税者に対しては、「その時点で更正・決定等すべきと認められない」旨を記載した通知書を交付することとします。
(3) 上記(1)及び(2)共通
課税庁の職員は、上記の終了通知書が交付された後においても、調査について必要があるときは、再調査ができることとします。
(注) 上記の改正は、平成24 年1月1日以後に新たに納税者に対して開始する調査及びその調査に係る反面調査について適用します。
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