>  今週のトピックス >  No.1275
非正社員、半数以上が格差に納得せず
●  非正社員の割合が高まる
  非正社員の増加が続くなか、その活用実態に関する調査結果が独立法人労働政策研究・研修機構から報告された。
  社員全体に占める非正社員の割合は、3年前と比べて「上昇している」が33.9%、「ほぼ同じ」が47.9%、「減っている」が10.0%と、およそ3分の1の事業所において増加している。3年前と比べて正社員数が減少した事業所(全事業所の52.4%)において非正社員が増加した割合が著しいことから(43.0%)、正社員が非正社員に置き換えられる傾向にあることが分かる。
  非正社員の担当する職務は雇用形態によって異なる。嘱託は「専門的知識や経験に基づく熟練業務」を期待され、契約社員は「実務知識・技能・経験に基づいた定型業務」「一定の専門知識と経験に基づく熟練業務」、派遣社員は「実務知識・技能・経験に基づいた定型業務」、パートタイマーは「単純な繰り返し作業」「実務知識・技能・経験に基づいた定型業務」での活用が多い。
  非正社員に求めるスキルの高さを雇用形態別にみると、嘱託、契約社員、派遣社員、パートタイマーの順になっている。一方、正社員は「組織管理」「自主的な企画・運営」など、非正社員に期待されない職務を担っている。
●  非正社員の賃金は正社員の4分の3
  非正社員を増やすメリットとしては、「人件費総額が削減できた」(78.3%)、「正社員数を減らすことができた」(62.7%)など、人件費負担の軽減である。
  デメリットは「一部の正社員に仕事が集中するようになった」(37.3%)、「技能・ノウハウの伝承が困難になった」(36.9%)など労務面の課題が指摘されているが、課題視している割合は高くない。
  「正社員とほとんど同じ仕事をしている際の賃金格差」を尋ねたところ、非正社員の賃金水準が正社員の「70〜80%未満」とする事業所が23.8%と最も多い。次いで「80〜90%未満」が19.2%、「60〜70%未満」が15.2%であり、非正社員の賃金水準はおおむね正社員の4分の3程度であるとうかがえる。
  正社員と比較した自分の賃金をどう認識しているかについて非正社員に聞いたところ、「低い」「かなり低い」が合わせて61.8%を占め、「同程度」13.0%、「分からない」22.0%となっている。
●  雇用形態別の格差に不満
  賃金格差を縮小させる必要性について「そう思う」と答えた事業所は34.3%、「思わない」が60.8%であった。人件費の削減が非正社員雇用のメリットである以上、やむを得ない回答である。
  格差がある理由については、「責任の重さが違うため」が45.7%、「長期勤続が見込めない」が29.3%と説明している。しかし、「特に要因がない」とする回答も26.9%ある。
  非正社員自身は、格差について「納得している」が21.5%であるのに対し、「納得していない」は56.4%と過半数を超えている。納得できない理由としては、「正社員と仕事内容に違いがない」が70.7%、「正社員同様の責任がある」が60.6%、「正社員以上の努力をしている」が59.9%である。
  従業員の満足度を高めるためには、雇用形態で賃金格差を設けるのではなく、個人の実績評価によって賃金を決定する必要があるだろう。
出所:独立行政法人労働政策研究・研修機構「多様化する就業形態の下での人事戦略と労働者の意識に関する調査」
(可児 俊信、(株)ベネフィット・ワン コンサルティング室、千葉商科大学会計大学院教授、
CFP®、米国税理士、DCアドバイザー)
2006.07.31
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