>  今週のトピックス >  No.1558
2007年世界経済回顧、住宅ローン問題で金融不安に
●  株価失速
  2007年も残すところ3週間余り。今年を振り返ると、世界経済はまさに激動の1年間だった。米国の住宅ローン問題に端を発した金融不安が、欧米金融機関の経営問題に発展。日本がかつて経験した不良債権問題のような状況にはまったまま、年末を迎えることになった。2008年は北京五輪や米大統領選挙が控えているが、世界経済が劇的に改善するような状況ではない。
  今年初めの「07年の株式市場は日経平均2万円台回復が目標か」(今週のトピックスNo.1366)を読むと、改めて経済予測の難しさを感じてしまう。日本企業の好業績持続や米国経済の堅調さを根拠に日経平均株価は2万円台を回復すると予想した。確かに企業業績は今期も堅調さを保っているが、米国の景気は住宅ローン問題をきっかけに大きく減速した。日経平均株価は一時1万8,000円台まで上昇したが、夏以降は失速。11月に1万4,000円台に沈む場面もあった。
●  金利上がらず
  経済の体温と呼ばれる長期金利も、年末に2%に向けて上昇していくとの予想が多かった。「金利の正常化」を掲げる日銀が景気拡大と物価上昇に合わせて、政策金利を1%に向けて引き上げる。これに連動して長期金利も上がっていくというシナリオだ。実際6月には「世界同時の金利上昇、米国が発端」(今週のトピックスNo.1462)で、米国の景気減速懸念が後退したことをきっかけに、日米欧など世界同時に金利が上昇し、日本でも長期金利が2%に限りなく接近したことを書いた。「次の利上げが、参院選後の8月にあるのでは」とも書いている(11月の時点までで追加利上げは見送られている)。
  こうした好調な経済情勢を背景とした株高・金利高のシナリオは、8月に米国の住宅ローン問題が顕在化したことで一気に逆回転することになる。なぜこのような事態が起きたのかは8月に「サブプライムローン問題、信用危機に発展」(今週のトピックスNo.1494)で詳しく書いたが、結局のところ米国の金融機関が借金を返済できそうもない人に金を貸し込んでいたことが原因だ。そのローンを証券化し、世界中の金融機関にばらまいていたことが危機を広げてしまった。
●  ドル安・原油高
  世界的な信用不安、金融不安に対応するため、世界の中央銀行は市場に資金を大量供給した上で、米連邦準備制度理事会(FRB)は段階的な利下げに踏み切った。この副作用が11月に書いた「米利下げの影響は?ドル安と原油・金の高騰招く」(今週のトピックスNo.1542)。米国経済=ドルの信認低下と超原油高だ。この結果、産油国に大量の資金が集中し、アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビ投資庁(ADIA)が苦境に立つ米シティグループに救済的な出資を行うという皮肉な事態に発展した。
  経済協力開発機構(OECD)はサブプライムローン問題の損失額が30兆円を超えるとの推定を発表し、この問題は2008年に持ち越しとなる。難しいとは知りながら、来年1月の「今週のトピックス」では2008年の経済予想をしてみたい。
2007.12.10
前のページにもどる
ページトップへ