政府の骨太方針「資産所得倍増プラン」とは?

高橋 浩史
2022.07.07

 令和4年6月7日に閣議決定された、「経済財政運営と改革の基本方針2022」では、新しい資本主義に向けた改革として、「資産所得倍増プラン」が盛り込まれました。そのプランの意図と内容を見てみましょう。
「貯蓄から投資」の流れを加速させるため?
 政府の経済財政運営と改革の基本方針2022、いわゆる“骨太方針”では、新しい資本主義に向けた重点投資分野のひとつに、「人への投資と分配」が掲げられています。

 そこで挙げられているのが「資産所得倍増プラン」で、その柱となっているのがNISA(少額投資非課制度)の抜本的拡充と、iDeCo(個人型確定拠出年金)制度の改革です。

 日本銀行「資金循環統計」(2021年第4四半期の速報)によると、家計の金融資産残高は、2021年末で2023兆円でした。金融資産の構成比で見ると現金・預金といった貯蓄が54.0%で、株式・投信・債券などの投資資産は16.5%に過ぎません。

 この家計の金融資産の構成を、貯蓄から投資へと向かわせることが、資産所得倍増プランの大きな狙いと言えるでしょう。
NISAやiDeCoの拡充は行われるのか?
 世界的な原材料価格の上昇や急速な円安などを背景に、値上げラッシュが続いています。投資は余裕資金で行うのが原則です。今後も物価高が進み、所得も増えないとなれば家計に余裕がなくなり、貯蓄はもちろんのこと、投資への意欲は高まるはずもありません。

 また、金融資産の保有額は年代によって大きな差があると考えられます。総務省「家計調査報告(令和3年)」を見ても、年代が上がるにつれ保有額も増えているのがわかります。

 また、60歳代以上の人にとっては、NISAやiDeCoの拡充や改革がどこまで有効なのか不透明です。iDeCoは2022年5月から加入可能年齢が65歳に引き上げられ、NISAについても2024年からは「新NISA」として制度の変更が予定されています。

 今後は、NISA制度の恒久化や、iDeCo加入可能年齢のさらなる引き上げが焦点になりそうです。施策の行方を注視していきましょう。
参考:
高橋 浩史(たかはし・ひろし)
FPライフレックス 代表
日本ファイナンシャルプランナーズ協会CFP®
1級ファイナンシャル・プランニング技能士

東京都出身。デザイン会社などでグラフィックデザイナーとして20年活動。 その後、出版社で編集者として在職中にファイナンシャル・プランナー資格を取得。2011年独立系FP事務所FPライフレックス開業。 住宅や保険など一生涯で高額な買い物時に、お金で失敗しないための資金計画や保障選びのコンサルタントとして活動中。 その他、金融機関や出版社でのセミナー講師、書籍や雑誌での執筆業務も行う。
ホームページ http://www.fpliflex.com
ブログ http://ameblo.jp/kuntafp/

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