国税庁が「消費税還付申告に関する国税当局の対応について」を2022年1月に公表したのをご存知だろうか。

 国税当局としては、各種情報に照らして必要があると認められる場合は、還付金の支払いをいったん保留し、還付原因を確認するため、行政指導として電話等による確認書類の提出や実地調査を実施した後に還付するのが、最近の実務の現場である。

 例えば、還付申告の主な原因が輸出免税である場合には輸出許可書やインボイス等のコピー、設備投資（建物や車など）である場合には契約書や請求書等のコピーのほか、取引実態の確認できる資料を税務署に郵送し、還付原因が確認された後に還付される。

 また、実地調査が実施されたケースでは、消費税を主に調査が行われるが、法人税や源泉所得税も対象として調査が行われることが多いため、すべての事実確認がされるまでは長期に渡って還付はされない。

 国税庁が発表した「令和2事務年度　法人税等の調査事績の概要」によると、消費税還付申告法人に対し総額219億円を追徴（うち、不正還付34億円）した。

 消費税に対する国民の関心が極めて高いことを踏まえ、消費税の仕入税額控除制度などを活用した不正還付は、いわば国庫金の詐取ともいえる悪質性が高い行為とされる。

 消費税不正還付防止のため、法人から提出された消費税還付申告書については、申告内容に応じて、還付金の支払手続を保留した上で厳正な審査を行い、行政指導や実施調査が行われている。

 主な不正の手口として、「調査法人は、取引実態がないにもかかわらず、国内での仕入れを装い架空仕入れ（課税仕入れ）を計上するとともに、国外への販売を装い架空免税売上げ（免税取引）を計上する方法により、多額の消費税還付金を記載した消費税の確定申告書を提出し、不正に消費税の還付を受けようとしていた」ことが紹介されている。

 消費税については、各取引に関する課税取引や非課税取引といった区分や、固定資産等の取得の時期、仕入税額控除の要件となる書類、輸出免税の適用を受けるための書類等の保存を、普段から税務調査を意識して取り組んでいただきたい。