年調手続きの電子化へ向けた準備を!!

浅野 宗玄
2022.10.17

 国税庁は、年末調整手続きの電子化へ向けて準備を呼びかけている。

 年末調整の際に従業員が作成して勤務先に提出する「保険料控除申告書」などの書類については、従業員から電子データにより提出(提供)を受けることが可能だ。また、これらの書類に添付していた保険会社から送付されている「控除証明書」についても電子化が進んでいる。会社・従業員双方にとってメリットが多い年末調整手続きの電子化だが、早めの準備が必要となる。
ソフトウェアの選定や事務手順の検討
 勤務先における準備として3点。まず、電子化の実施方法だが、年末調整の電子化を実施するに当たり、従業員が使用する年末調整申告書作成用のソフトウェアについてどのソフトウェアを使用するか、電子化後の年末調整手続きの事務手順をどうするかなどを検討する。従業員が提供する年末調整申告書データは、国税庁から提供する年調ソフトだけでなく、仕様公開を通じ同様の仕組みを取り込んだ民間のソフトウェアでも作成できる。
従業員への早期の周知と給与システム等の改修等
 次に、従業員への周知がある。従業員から年末調整申告書を電子データで提供を受けるにあたり、法令上は事前に従業員から同意を得る必要はないが、電子化にあたっては、従業員においても、保険会社等から控除証明書等データ取得のための手続きなど、事前準備が必要なので、電子化する際には従業員への早期の周知が必要となる。また、上記で決定した、従業員が使用する年末調整申告書作成用のソフトウェアや事務手順を周知する必要がある。

 また、従業員から控除証明書等データの取得方法について照会があった場合には、マイナポータル連携により取得することができる旨の周知が必要だ。従業員のマイナンバーカードの取得が間に合わないなどにより、マイナポータル連携による取得ができない場合は、その従業員が契約している保険会社等のホームページ等から控除証明書等データを取得するよう周知することも必要となる。

 3番目に給与システム等の改修等がある。従業員から提供を受ける年末調整申告書データや控除証明書等データを、利用している給与システム等にインポートし、年税額等の計算を行うためのシステムの改修等を行う。
申告書作成用のソフトウェアの取得など従業員における準備
 なお、従業員における準備として、(1)年末調整申告書作成用のソフトウェアの取得と、(2)控除証明書等データの取得(マイナポータル連携を利用しない場合のみ)が挙げられる。(1)は、保険会社等から取得する控除証明書等データを利用して年末調整申告書データを作成するためのソフトウェア(国税庁が提供する「年末調整控除申告書等作成用ソフトウェア」など)を取得すること。また、(2)は保険会社等のHP等から、控除証明書データを取得することだ(具体的な取得方法は保険会社等により異なる)。
参考:
浅野 宗玄(あさの・むねはる)
株式会社タックス・コム代表取締役
税金ジャーナリスト

1948年生まれ。税務・経営関連専門誌の編集を経て、2000年に株式会社タックス・コムを設立。同社代表、ジャーナリストとしても週刊誌等に執筆。著書に『住基ネットとプライバシー問題』(中央経済社)など。
http://www.taxcom.co.jp/
○タックス・コム企画・編集の新刊書籍『生命保険法人契約を考える』
http://www.taxcom.co.jp/seimeihoujin/index.php

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