最低賃金 過去最大の引き上げで注意すべきこと

沖田 眞紀
2022.10.24

 2022年10月より、すべての都道府県で最低賃金が改定となりました。全国平均で961円となり、昨年度より31円の引き上げ、各都道府県過去最大の引き上げ幅となっています。

 物価が上昇する中、労働者にとって歓迎すべきことですが、働き方によって思わぬ影響が出る場合もあります。最低賃金引き上げに伴う、見落としがちなポイントの一部を紹介いたします。
月給者の最低賃金割れに注意
 最低賃金は時間給で示されているため、時間給制で働くパートタイマー、アルバイト等の方は、チェックが容易です。しかし月給制で働く方の場合は、計算のもととなる額(毎月必ず支給される賃金。臨時に支払われる手当、賞与、割増賃金、皆勤手当、通勤手当、家族手当を除く)を時間給に換算し、最低賃金を下回っていないかどうか確認する必要があります。

 また、固定残業代を支給している場合は、新たな時間給をもとに、何時間分の固定残業代なのかを明確にして支給しなくてはなりません。
派遣労働者の最低賃金は派遣先事業場の最低賃金を適用
 派遣労働者の最低賃金は、派遣元事業場の最低賃金ではなく、派遣先事業場の所在地である都道府県の最低賃金が適用されます。また最低賃金には、都道府県ごとに定める地域別最低賃金と、特定の産業について設定された特定最低賃金があります。派遣先の事業場が特定産業に該当する場合は、特定最低賃金を適用する必要があります。
標準報酬月額 随時改定の可能性
 最低賃金の引き上げで固定給が上がっただけでは、2等級以上の改定はないかもしれませんが、引き上げがあった月から3カ月の間に、残業等で給与額が大幅に増えてしまった場合は、標準報酬月額の随時改定の対象になる可能性があります。10月支給給与から改定の場合は、10,11,12月の給与額を基に1月分保険料から、11月支給給与から改定の場合は、11,12,1月の給与額を基に2月分保険料から改定となります。
健康保険被扶養者 130万円の壁
 2022年10月より、社会保険の適用拡大により、従業員101人以上の事業場で週所定労働時間が20時間以上の方(その他要件:1カ月の賃金額が88,000円以上、勤務期間1年以上見込み、学生以外)は社会保険に加入することとなりました(2024年10月より従業員51人以上に改定)。逆にいうと、従業員100人以下の事業場で、週20時間以上30時間未満の契約で働く方は、社会保険に加入することができません。また、健康保険の被扶養者の認定条件として、年間収入が130万円未満であることとされているため、夫の被扶養者として、従業員100人以下の事業場で週20時間以上30時間未満の契約で働く妻は、年間130万円を超えないよう、今まで以上に注意が必要となります。年間130万円の中には、通勤手当や残業代、賞与も含まれます。

 さらに年間130万円、というのは、認定日以降の見込みの収入額が年間130万円、という意味であるため、給与収入の場合は月額108,333円以下となり、これを超える月が続く、続くことが見込まれる場合には、扶養から外れることとなります。その場合は、自ら国民年金、国民健康保険に加入する必要があります。
参考:
沖田 眞紀(おきた・まき)
特定社会保険労務士
社労士事務所コンフィデンス

千葉県出身。大手電機メーカーをはじめ、介護施設、建設関連会社等様々な業種で、人事労務を担当。長年の実務経験を活かし、現在は人事労務相談・助成金手続・就業規則作成などを中心に社会保険業務および各種相談業務を行っている。

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