約6割の企業、特別休暇制度あり

庄司 英尚
2022.12.05

賃金だけでなく、休暇制度も重要
 求職者が応募を検討する際に、まず優先する会社の労働条件として「賃金」はいうまでもないが、その他としては1日の労働時間、年間の休日日数、そして休暇制度なども重要視される。

 休暇制度の有無は、従業員も意識しているところであり、その内容によっては働く意欲に大きな影響を与える可能性がある。近年では中小企業であっても徐々に労働環境の整備が進んでおり、柔軟な休暇制度などを積極的に取り入れて職場環境を強く意識しているところも増えてきている。

 今回は休暇制度の中でも、特別休暇制度の導入状況について厚生労働省の「令和4年就労条件総合調査 結果の概況」のデータを一部参考にしながら、企業規模別及び特別休暇制度の種類について見ていきたい。
社員数が多い企業のほうが「特別休暇制度がある」割合は高い
 前述のデータによると、夏季休暇、病気休暇等の特別休暇制度がある企業割合は58.9%となっている。これを企業規模別に見ると、社員数が多いほうがその数値は高くなっている。それでも中小企業といわれる30~99人の区分で57.0%となっており、決して少ないというわけではない。

 特別休暇制度を種類(複数回答)別に見ると、「夏季休暇」41.5%、「病気休暇」22.7%、「リフレッシュ休暇」11.8%、「ボランティア休暇」4.2%、「教育訓練休暇」4.0%、「左記以外の1週間以上の長期の休暇」15.1%となっている。4割の企業が特別休暇制度で夏季休暇を設けていることがわかる。
病気休暇、療養休暇制度があると安心して働くことができる
 特別休暇は、会社が従業員に一つの福利厚生として与える休暇であって、法律では定められていないので、会社で独自に規定することになる。会社の任意になるので特別休暇を設けなくても問題はない。そのため、特別休暇制度には該当しないが、夏休みとして例えば7日間分を休日として設定することで休日日数が多くなっている企業もある。

 上記であげた休暇の種類以外にも、アニバーサリー休暇や誕生日休暇、そして結婚休暇なども特別休暇として規定して活用している企業もある(調査項目の「左記以外の1週間以上の長期の休暇」に含まれると思われる)。また、上記のアンケート調査の種類には入っていないが、慶弔休暇も特別休暇の1つといえる。

 特別休暇制度を導入する際には、従業員のニーズが一番大事であり、その効果も考えて慎重に検討すべきであろう。特定の人だけが対象になるものではなく、例えば従業員が病気や事故の際にしばらく休むことになっても、療養休暇や病気休暇のようなものが制度としてあれば従業員側も普段から安心して働くことができるので、そのような種類の休暇を望む声は増えている。

 療養休暇や病気休暇は、私傷病の療養のために、年次有給休暇以外で利用できる休暇制度という位置づけになる。取得できる要件や期間は、使用者が決定することになるので様々になるが、一般的には有給休暇になるので、治療や療養等に備えた年次有給休暇の取り控えが減少することが期待できる。一方で経営陣側からすると、生産性などを考えるとあまり長すぎるのも負担が大きくなるのでそのバランスが難しい。使用者側が自社の現状をふまえて労働者側の意見も聞きながら、よく話し合って検討するのが望ましいといえる。
参照:
庄司 英尚(しょうじ・ひでたか)
株式会社アイウェーブ代表取締役、アイウェーブ社労士事務所 代表
社会保険労務士 人事コンサルタント

福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所(現・アイウェーブ社労士事務所)を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続き及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。

公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/

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