4社に1社はインフレ手当を支給する、検討している

庄司 英尚
2022.12.19

インフレ手当を支給した企業割合は6.6%
 政府は経済界に向けて物価上昇をカバーするための賃上げ要請をしているが、この流れを受け、従業員の生活支援を目的とした「特別手当」を支給する企業が出てきている。

 そこで帝国データバンクは、インフレ手当についてアンケートを行った。アンケート期間は2022年11月11日~15日、有効回答企業数は1,248社(インターネット調査)となっており、最新の傾向を読み解くことができる。

 調査結果によると、物価高騰をきっかけとして、従業員に対して特別手当(インフレ手当)の支給を実施または検討しているか尋ねたところ、「支給した」企業は6.6%であった。「支給を予定している」企業は5.7%、「支給していないが、検討中」の企業は14.1%であり、合わせると全体の4社に1社(26.4%)がインフレ手当に取り組んでいることがわかった。他方、「支給する予定はない」は63.7%であった。
一時金平均支給額は53,700円
 インフレ手当の支給方法および支給額(予定・検討中の企業を含む、複数回答)について尋ねたところ、インフレ手当に取り組む企業のうち「一時金」と回答した企業は66.6%、「月額手当」と回答した企業は36.2%であった。

 一時金の支給額は、「1万円~3万円未満」が27.9%で最も多く、「3万円~5万円未満」および「5万円~10万円未満」がそれぞれ21.9%であった。「10万円~15万円未満」は9.1%、「15万円以上」は7.3%と、10万円以上を支給する企業は16.4%も占めた。なお、一時金の平均支給額は約5万3,700円であった。

 月額手当の支給額は、「3千円~5千円未満」と「5千円~1万円未満」がそれぞれ30.3%で最も多く、次いで「3千円未満」(26.9%)が続き、1万円未満が全体の9割近くを占めた。「1万円~3万円未満」は11.8%、「3万円以上」は0.8%であった。なお、月額手当の平均支給額は約6,500円であった。

 月額手当として支給すると、手当を下げねばならない時にインパクトが大きくなるので、賞与に追加して今をしのいでもらいたいという声も上がっており、一時金で支給する企業割合が多くなるのは納得できるところだ。
目的はモチベーションアップと人材定着
 帝国データバンクの分析によると、「手当支給の目的として、物価高騰で実質賃金が低下する従業員の生活を下支えする、モチベーションアップ、人材の定着があげられる」としており、「ただし本来、物価の上昇分は特別手当でなくベースアップとして賃金に反映するのが望ましい」とまとめている。

 最後に、月額手当としてインフレ手当を支給する際には、就業規則にきちんと定義し、その制度や金額について記載をしなければならない。またその実施期間なども含めてまとめておくとともに具体的に何に対しての補填であるかについてまで明記すると、従業員にとってもわかりやすいものになると思われる。
参照:
庄司 英尚(しょうじ・ひでたか)
株式会社アイウェーブ代表取締役、アイウェーブ社労士事務所 代表
社会保険労務士 人事コンサルタント

福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所(現・アイウェーブ社労士事務所)を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続き及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。

公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/

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