出産育児一時金、過去最高の50万円に増額

庄司 英尚
2023.02.13

2023年4月より増額に
 出産にかかる費用は病気やケガとは違うので基本的には保険適用外となっている。全額自己負担になるが、公的制度によって出産育児一時金という給付を受けることができる。

 出産育児一時金とは、健康保険法等に基づく保険給付として、健康保険や国民健康保険などの被保険者またはその被扶養者が出産したとき、出産に要する経済的負担を軽減するため、一定の金額が支給される制度である。その一時金の支給額が現在42万円(本人支給分40.8万円+産科医療補償制度の掛金分1.2万円)となっているが、2023年4月から50万円に引き上げることが決まった。
出産育児一時金スタート時は30万円だった
 出産育児一時金は、家庭に対しての出産費用の負担軽減策として、1994年に創設された。スタート当初は30万円だったが、少しずつ増額されてきて、今回の8万円の増額は過去最高額である。しかしながら増額されても産院のほうもこれにあわせて値上してくるところも多く、結果的には被保険者のほうには恩恵が少ないので不満もたくさんあがっている。

 出産育児一時金の対象者は、公的医療保険の被保険者または被扶養者で、妊娠4カ月以上で出産をした方であり、早産、死産、流産、人工妊娠中絶の場合も支給対象となる。なお多胎児を出産したときは、胎児数分だけ支給されることになっている。

 健康保険に加入している被保険者には、出産に関連する給付として出産手当金という制度もある。出産手当金は、産前産後休業中に、会社を休みその期間、給与の支払いがなかった期間を対象として、給与の3分の2相当額の支給があるのであわせて覚えておくとよい。
出産育児一時金の支給方法
 出産育児一時金の支給方法については、協会けんぽを例にあげると、出産にかかる費用に出産育児一時金を充てることができるよう、協会けんぽから出産育児一時金を医療機関等に直接支払う仕組み(直接支払制度)があるので、その場合、出産費用としてまとまった額を事前に用意することがなく、実際には不足額を病院等へ支払うだけで済む(費用が出産育児一時金より安く済んだ場合は差額を病院等に請求することができる)。

 ただし、直接支払制度を受け付けていない病院等も一部あるので、そこは事前に確認しておきたい。なお、直接病院等に出産育児一時金が支払われることを希望しない方は、病院等へ出産費用を支払ったうえで、協会けんぽ支部に申請して出産育児一時金を受け取ることもできる。
庄司 英尚(しょうじ・ひでたか)
株式会社アイウェーブ代表取締役、アイウェーブ社労士事務所 代表
社会保険労務士 人事コンサルタント

福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所(現・アイウェーブ社労士事務所)を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続き及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。

公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/

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