退職後の健康保険、任意継続を選択したほうがよいケースは?

庄司 英尚
2023.03.27

会社退職後の健康保険の選択は3つある
 従業員が会社を退職した場合、健康保険については、①任意継続健康保険、②国民健康保険、③家族の健康保険(被扶養者)の3つのうちいずれかに加入する手続きが必要となる。

 今回は、退職後に任意継続被保険者になるためにはどうしたらいいのか、要件や保険料、手続きの流れなどについてまとめておくこととする。
資格喪失日から20日以内に申請すること
 まず任意継続被保険者制度とは、会社を退職等によって健康保険の被保険者の資格を喪失したときに、個人の希望により、今まで加入していた健康保険に個人で継続して加入できる制度のことをいう。ただし、任意継続被保険者になるためには、資格喪失日の前日までに「継続して2か月以上の被保険者期間」があり、なおかつ資格喪失日から「20日以内」に申請するという大事な要件があるので注意しなければならない。

 会社を退職するので任意継続被保険者の手続きは自分で行うしかない。退職したらそれまでの保険証は使うことができないので速やかに会社に保険証を返還し、喪失の手続きをしてもらわなければならない。喪失手続きが済んでいなければ、本人が任意継続被保険者になることを希望しても、保険者も会社に事実確認をするために問い合わせをするなどして時間がかかってしまうことになる。

 なお、申請窓口は協会けんぽの場合、自宅住所地を管轄する全国健康保険協会の都道府県支部で行うことになる。資格取得と同時に、家族を被扶養者として手続きする場合は、「被扶養者届」も提出するが、その際に扶養の事実が確認できる(生計維持していることを確認できる)書類の添付が必要になる場合があるので、保険者(協会けんぽまたは健康保険組合)に事前に確認して書類の再提出や追加書類を求められることのないようにしたい。
任意継続被保険者の被扶養者分の保険料はかからない
 任意継続被保険者は、在職中は会社と折半となっていた保険料を、退職後は全額自分で負担することになる。令和5年度における協会けんぽの任意継続被保険者の標準報酬月額の上限は30万円となっている。標準報酬月額が30万円より高かった人については30万円で計算するので、介護保険料がかかる場合でも最大で35,460円(令和5年4月分より)となる。

 任意継続被保険者は、被扶養者については保険料がかからないという大きなメリットもあるので被扶養者がいる場合、家族総額で保険料を比較するのがいいだろう。
当月分は10日までの納付期限を絶対厳守すること
 任意継続の被保険者期間は最大で2年間となっているが、2年間の途中であっても保険料を納付期限までに支払わなかった場合、または再就職した場合等には被保険者資格を喪失することになる。

 毎月の保険料は、月初めに送付される納付書でその月の10日(10日が土日曜・祝日の場合は翌営業日)までに納めることとなっている。初回は保険者の指定する日となるが、資格取得日によっては2か月分支払うことになる場合もある。払い忘れを防ぐために前納制度もあり、前納すると少し割引もあるので疑問点については保険者にしっかり事前に確認しておくことで勘違いも防ぐことができる。

 任意継続被保険者制度そのものは難しいわけではないが、退職に合わせて引越しなどをすることもあり、被扶養者がいると少しだけややこしいこともある。また申請書類も自分で作成することになるので、そういう作業が苦手な方は退職前に余裕をもって調べておくことをおすすめする。
参照:
庄司 英尚(しょうじ・ひでたか)
株式会社アイウェーブ代表取締役、アイウェーブ社労士事務所 代表
社会保険労務士 人事コンサルタント

福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所(現・アイウェーブ社労士事務所)を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続き及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。

公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/

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