令和3年分の国外財産調書提出状況と加算税の状況

堀 雅哉
2023.04.06

 少し前になるが、令和3年分の国外財産調書の提出状況が1月に国税庁から発表された。あわせて、令和3事務年度における所得税および相続税の実地調査の結果、国外財産調書制度における過少申告加算税および無申告加算税の特例措置が適用された件数および増差所得等金額についても公表されている。
国外財産調書とは
 国外財産調書は、その年の12月31日おいてその価額の合計額が5,000 万円を超える国外財産(ただし、相続開始年の年分については、その相続または遺贈により取得した国外財産は記載しなくても可)を有する居住者(非永住者は除く)に対して、その年の翌年の3月15 日(ただし、令和5年分以降は6月30日)までに、その国外財産の種類、数量及び価額その他必要な事項を記載して所轄税務署長に提出することが義務づけられている。
 近年、国外財産の保有が増加傾向にある中で、国外財産に係る所得税や相続税の課税適正化を図るため2014年(平成26 年)1月に施行された制度であり、令和3年分の国外財産調書の提出状況は、総提出件数12,109件(対前年分約6.9%増)、総財産額5兆6,364億円(対前年分約13.5%増)となっている。
国外財産に係る所得税や相続税の申告洩れがあった場合の加算税取扱い
 国外財産に係る所得税や相続税の申告洩れがあれば、もちろん、過少申告加算税や無申告加算税が課せられることになるが、国外財産調書の提出状況や記載内容によって、以下のような加算税の軽減・加重についての特例措置が行われている。
提出された調書に記載された国外財産に係る所得税・相続税の申告洩れがあった場合の加算税については税率を軽減(▲5%)
調書の提出がない場合、または提出された調書に記載のない国外財産に係る所得税・相続税の申告洩れが生じた場合の加算税については税率を加重(+5%)
国外財産に係る所得税または相続税の調査に関し修正申告等があり、加算税適用対象者が、その修正申告等の日前に、国外財産調書に記載すべき国外財産の取得、運用または処分に係る書類(電磁的記録や写しを含む)の提示または提出を求められた場合に、その日から60 日を超えない範囲内で、所定の日までに提示等がなかった場合、①の加算税の軽減措置は適用せず、②の加算税の加重措置について加算割合を+10%とする
 令和3事務年度における所得税および相続税の実地調査の結果において、上記の特例措置が過少申告加算税および無申告加算税に適用された件数、および対象となった増差所得等金額は以下のとおりとなっている。
件数 増差所得等金額
軽減措置 135件 41億9,893万円
加重措置 293件 439億2,378万円
令和5年度税制改正における加算税の改正
 国外財産に限らないが、課税の適正化に向けた取組みの一環として、無申告行為に対する税務当局の対応はますます厳しくなっており、令和5年度税制改正においても、期限後申告書の提出や決定等があった場合において、その申告、更正または決定に基づいた納付すべき税額が高額な納税者に対する無申告加算税の加重措置が設けられた。この措置は2024年(令和6年)1月1日以降の法定申告期限分について適用され、現行の無申告加算税率では増差税額50万円までの加算税率は15%、50万円超で20%であるところ、改正後は、さらに300万円超について30%の加算税率が設定されることとなった。また、無申告が繰り返されるような場合に対しても厳しい加重措置が設けられている。
 国外財産については特に財産額が高額であることが多いと想定されるが、適正な申告・納付を行うことができるように十分な管理と実態の把握ができる体制を整備することがますます重要となっている。
参考:
(セールス手帖社 堀 雅哉)

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