半数以上の企業が人手不足を感じている

庄司 英尚
2023.04.10

大企業では62.1%と高水準に
 株式会社帝国データバンクは、2023年1月に行った「人手不足に対する企業の動向調査」の結果を発表した。出口の見えない人手不足状態が続いているが、調査結果によると2023年1月時点で人手不足を感じている企業の割合は、正社員では51.7%で、5カ月連続で5割超の高水準となっている。前年同月から3.9ポイント増加しており、1月としては2019年(53.0%)に次いで2番目の高さとなった。

 特に大企業では62.1%と高水準で、全体(51.7%)を大きく上回る結果となっており企業側は賃金の上昇の関係もあり今後も苦しい状況が続きそうである。
正社員の業種別不足トップは、77.8%の「旅館・ホテル」
 正社員の人手不足割合を業種別にみると、「旅館・ホテル」が77.8%で最も高かった。月次でも3カ月連続のトップとなり、人手不足が深刻化している。次いで「情報サービス」、「メンテナンス・警備・検査」、「建設」と続いている。

 「旅館・ホテル」は、インバウンド需要の高まりもあり、人手不足を補うにも限界があり、客室稼働率を下げる代わりに施設改修などで客単価を上げるなどの利益を出すための工夫に力を入れて対応する企業もある。旅館・ホテル業界は生き残りをかけて必死である。

 非正規社員においても業種別トップは、「旅館・ホテル」が81.1%で最も高く、次いで「飲食店」が80.4%で続き、この2業種が群を抜いた人手不足状態にある。

 飲食店業界からは、コロナ禍の相次ぐ時短営業で離れてしまった働き手が戻ってこないという声が多い。そんな苦しい状況の中でも対応策の1つとしてモバイルオーダーを始め、さらに効率化を進めようと配膳ロボットを導入しようとする動きもみられているがなかなか思うようにはいかないようだ。
人手不足企業のほうが賃上げを見込んでいる割合は高い
 2023年のキーワードである「賃上げ」は避けては通れない人材の獲得や定着の要素であり、各企業は強く意識せざるを得ない。

 実際に、2023年度の賃上げ見込みでは人手不足企業(63.1%)は全体(56.5%)より高く、6.6ポイントの差が開いた。また、従業員数区分でみると「6~20人」「21~50人」「51~100人」のような中小企業がいずれも60%台後半の割合を示し、特に賃上げ意識が高いことが明らかになった。

 今後は賃上げの波についていけず人材確保がままならない企業が増えることは、どの業界においても考えられる。2022年の人手不足倒産のうち「従業員退職型」は全体のうち4割を超えるなど増加傾向にあり、人材流出を理由に事業をたたむケースが後を絶たない。労働トラブル、特に賃金に関連することが一斉退職のきっかけとなることも考えられるので、早急な対応が重要になってくるだろう。
参照:
庄司 英尚(しょうじ・ひでたか)
株式会社アイウェーブ代表取締役、アイウェーブ社労士事務所 代表
社会保険労務士 人事コンサルタント

福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所(現・アイウェーブ社労士事務所)を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続き及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。

公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/

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