会社にも地震保険が必要!?

水谷 力
2023.06.01

頻発する地震
 今年は関東大震災から100年になります。日本の各地で地震が頻発しており、首都圏では直下型地震への警戒が強まっています。そもそも日本は地震大国であり、首都圏に限らず他の地域でも、南海トラフ地震など地震への備えを怠ることはできません。

 ところが、地震保険(居住用建物および生活用動産を対象として損害保険会社が取扱っているもの)の2021年の付帯率は、全国では69.0%です(付帯率とは、火災保険にあわせて地震保険をどの程度契約しているか計算したもので、地震保険の普及度合いを示す一つの指標です)。この数値は、東日本大震災のあった2011年は53.7%でしたが、それ以降一貫して増加傾向にあります。ただし、地域差があり、東京都や神奈川県、千葉県では60%台前半ですが、近年、大規模な地震を直接経験した宮城県(88.7%)や熊本県(85.3%)を大きく下回っています。

 地域によって、地震保険に対するスタンスが異なるようですが、火災保険が値上がり傾向なので、地震保険は更改(更新)しなかった(または、加入しなかった)という話を耳にすることがあります。他にも、地震保険に加入しない理由には、以下のようなものがあるようです。
起こるかどうかわからない地震のために保険料を払うのはもったいない
もし地震が起きても何とかなる
 また、地震保険に入らない方の中には、地震火災による損害は火災保険の補償対象外であることをご存じない方が意外に多くいらっしゃいます。また、「火災による損害には保険で対応する」一方で、「地震による損害には保険で対応しない」理由が明確でないまま、何となく地震保険に加入していないという方もいらっしゃいます。

 いつ起こるかわからない地震に備えて、被災後の多額な生活再建資金を常に用意しておくのは現実的ではありませんので、地震保険の活用を選択肢として検討しておきたいところです。そもそも、地震保険制度の目的は、地震等による被災者の生活の安定に寄与することだからです。
中小企業向けの特約も拡充されてきている
 一方、会社向けの地震保険(特約)は、上記の居住用建物および生活用動産を対象とした保険よりもさらに加入率が低いとされています。ある損害保険関係者の直観としては、数%程度ではないかという声もあります。その理由の一つは、政府が支払いを保証する居住用建物および生活用動産を対象とした地震保険と異なり、会社の地震保険はこの仕組みがなく、リスク許容量に限界があるため保険料が比較的高めになるという点にあるようです。

 ただ、地震によって事業に深刻なダメージを受けた場合、保険金を受け取って早期に再建できるか否かは事業継続に大きな影響を与えます。最近は、中小企業向けにパッケージ化された地震危険補償特約(火災保険の特約。会社によって名称は異なる)も拡充されてきており、その活用をぜひ選択肢として検討しておきたいところです。
【参考情報】
生命保険の募集人の方は、上記のような損害保険の話から生命保険の話につなげることも可能です(詳しくは以下の書籍が参考になります)。地震保険の話題からのアプローチトークも収録されています(第2章第7話地震が起こると言われているけど、地震保険には入った方がよいの?…)。
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水谷 力(みずたに・ちから)
株式会社セールス手帖社保険FPS研究所
社会保険労務士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士
組織開発コンサルタント

大手保険会社在職中にFP資格やコーチング資格等を取得。現在は各種執筆活動などをおこなっている。著書には、「違いを生み出すファーストアプローチ」「違いを生み出す生損保リスクチェック」(いずれもセールス手帖社保険FPS研究所)がある。

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