退職所得課税、骨太の方針で見直しか?

村田 直
2023.06.15

経済財政運営と改革の基本方針、退職所得課税の見直しに言及か?
 政府は現在、6月中に策定される「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」について、大詰めの作業を行っている。その中に、退職所得課税についての抜本的な是正方針が盛り込まれる可能性があるようだ。

 退職所得課税は、基本的に終身雇用を前提として設計されているため、同一法人における勤続年数が長いほど税金が少なくなる仕組みになっており、自由な労働移動を妨げる一因となっているとの指摘がある。

 毎年度の税制改正大綱においても、今後の課題として挙げられる項目の常連となっているが、ついに具体的に見直しが検討されるタイミングに差し掛かったのかもしれない。
退職所得課税の仕組み~退職所得控除、1/2課税、分離課税
 退職所得の金額は、原則として、次のように計算される。
{収入金額(源泉徴収される前の金額)-退職所得控除額}×1/2=退職所得の金額
注1:
退職手当等が「特定役員退職手当等」に該当する場合
特定役員退職手当等(役員等勤続年数が5年以下である人が支払を受ける退職手当等のうち、その役員等勤続年数に対応する退職手当等として支払を受けるもの)については、退職金の額から退職所得控除額を差し引いた額が退職所得の金額になる(上記計算式の2分の1計算の適用はない)。
注2:
退職手当等が「短期退職手当等」に該当する場合
短期退職手当等(短期勤続年数に対応する退職手当等として支払を受けるものであって、特定役員退職手当等に該当しないもの)については、退職金の額から退職所得控除額を差し引いた額のうち300万円を超える部分については、上記計算式の2分の1計算の適用はない。
 退職所得控除額が控除され、課税所得が1/2になる上、さらに分離課税とされているため、給与所得などの他の所得と比べると、非常に優遇された制度となっている。

 退職所得控除額については、以下の表の通り、勤続年数が20年を超えると1年当たりの控除額が40万円から70万円に増額される設計となっており、税制上、終身雇用を後押しする仕組みになっている。
退職所得控除額の計算の表
勤続年数(=A) 退職所得控除額
20年以下 40万円 × A
(80万円に満たない場合には、80万円)
20年超 800万円 + 70万円 × (A - 20年)
出典:
国税庁HP タックスアンサー(よくある税の質問) No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)
 また、退職金を年金としてもらう場合には、退職所得ではなく、雑所得として公的年金等控除の適用を受けた上で課税されるが、両者の課税の公平性については、検討の余地がある。

 議論はまだ全くの白紙で、最終的に改正されるにしても、与党税制調査会での議論を経る必要があるが、今後の行方を十分に注視しておく必要があるだろう。
村田 直(むらた・ただし)
マネーコンシェルジュ税理士法人
税理士

大阪府茨木市出身。大学卒業後、会計事務所勤務を経て現法人へ。平成22年3月税理士登録。法人成り支援や節税対策・赤字対策など、中小企業経営者の参謀役を目指し、活動中。年に数回の小冊子発行など、事務所全体で執筆活動にも力を入れている。

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