後払い決済「BNPL」の光と影

高橋 浩史
2023.07.06

 キャッシュレス決済の中で、このところ話題に上がるものに「BNPL」があります。BNPLとは何か、その特徴やその問題点を見ていきます。
メールアドレスなどで決済可能に
 BNPLとは、「Buy Now Pay Later」を略したもので、日本語で言えば、「今買って、後で支払う」という意味になります。キャッシュレス決済の支払いの種類で分けると、後払いに分類される決済手段です。

 クレジットカードと同様に、消費者の購入代金はBNPLの事業者が加盟店に代金を立て替え払いし、消費者が後から事業者に代金を支払う仕組みです。

 とはいえ、同じ後払いでも、クレジットカードとの大きな違いがあります。それが、クレジットカードのような与信審査なしで利用できるという点です。

 審査基準を満たせず、クレジットカードを持てない人にとっては、手持ちの現金が不足しているときでも買い物が実現できるメリットがあります。また、カード番号漏洩による不正利用が心配な人にとっても、有効な決済手段と言えるでしょう。
手軽さゆえの使い過ぎの懸念も
 BNPLは、欧米を中心にクレジットカードに代わる決済手段として広がってきました。日本でもPaidy(ペイディ)などが参入し、利用の中心はZ世代(1990年代半ば以降生まれの若者)と呼ばれる若年層と言われています。

 利用方法は簡単で、Paidyの場合で見ると、アプリにメールアドレスや電話番号を入力するだけで代金決済ができ、実際の支払いは買い物の翌月の指定日までに、コンビニ払いや口座振替などで行います。

 審査不要、電話番号などで手軽に決済といった特徴はもちろんのこと、「手数料無しで複数回の分割払いが可能」「アプリで利用額の確認がすぐにできる」といった利便性も、若年層のニーズにマッチしたのではと言われています。

 一方で、BNPLサービスを提供する加盟店にとってもメリットがあります。銀行口座やクレジットカードのない人に対して商品の購入機会を提供することができ、顧客層の拡大につながる可能性があるからです。

 BNPLを巡っては、審査の緩さから複数のBNPLを利用して多重債務に陥ることが問題視され、海外ではBNPL事業者への規制や業界内でのガイドラインを定める動きについての報道もありました。

 国内でも、今後BNPL事業者や利用者の増加が続けば、同様の問題が起きることも想像されます。サービスを提供する側は消費者が抱えるリスクについての理解が、消費者にとっては節度ある利用の徹底が求められるでしょう。
高橋 浩史(たかはし・ひろし)
FPライフレックス 代表
日本ファイナンシャルプランナーズ協会CFP®
1級ファイナンシャル・プランニング技能士

東京都出身。デザイン会社などでグラフィックデザイナーとして20年活動。 その後、出版社で編集者として在職中にファイナンシャル・プランナー資格を取得。2011年独立系FP事務所FPライフレックス開業。 住宅や保険など一生涯で高額な買い物時に、お金で失敗しないための資金計画や保障選びのコンサルタントとして活動中。 その他、金融機関や出版社でのセミナー講師、書籍や雑誌での執筆業務も行う。
ホームページ http://www.fpliflex.com
ブログ http://ameblo.jp/kuntafp/

▲ PAGE TOP