主婦の6割、年収の壁がないならもっと働きたい

庄司 英尚
2023.07.31

就業調整していないパート、前年より増加だが…
 株式会社マイナビは、「主婦のアルバイト調査(2023年)」の結果を5月に発表した。調査結果によると、20~50代の既婚女性に就業調整の実施(年収を一定額以下に抑えるために就労時間を調整すること)状況を聞いたところ、「就業調整はしていない」が44.9%と最も多かった。

 次いで、「配偶者の社会保険の扶養となる限度額を超えないようにするため調整(130万円の壁)」が23.0%、「自分の所得税の非課税限度額を超えないようにするため調整(103万円の壁)」が18.8%となっており、やはりこの2つの壁を意識している人の割合は多く、働き方に影響を与えていると思われる。

 2022年10月の社会保険適用の拡大によりパートやアルバイトが社会保険に加入しやすくなったことから、「就業調整はしていない(44.9%)」は前年調査より4.2ポイント増加したが、主婦の半数以上は依然として「年収の壁」を超えないように就業調整を行っていることが明らかになった。今後はこのようなデータを政府も参考にすべきであり、企業側も主婦の働き方の希望や就労意欲を理解するうえでは重要な資料となるので参考にしたいところだ。
年収の壁:世帯主の扶養範囲内で働く場合の年収基準で、例えば年収103万円を超えると所得税がかかり、年収130万円以上になると扶養から外れて社会保険料の負担が発生する。
20代の7割、年収の壁がないならもっと働きたい!
 就業調整をしている人に対して年収の壁がなくなり、一定の年収額を超えて働いても手取りが減らなくなった場合、あなたは現在よりもっと働きたいと思うかという質問には、「現在の雇用形態でもっと働きたい」が43.8%と最も高く、次いで「現状維持が良い」が34.5%、「雇用形態を転換(非正規→正規、有期契約→無期契約など)してもっと働きたい」が14.6%、「現在より働きたくない」が7.2%となった。

 「現在の雇用形態」と「雇用形態を転換」を合わせるともっと働きたいという回答は58.4%を占めており、就労意欲は比較的高いと思われる。もっと働きたいと答えた割合を年代別でみると、20代が70.3%と最も高く、次いで30代が64.8%となった。
もっと働きたい理由は、貯金をするため73.2%
 年収の壁がなくなり一定の年収を超えて働いても手取りが減らなくなった場合、「現在の雇用形態でもっと働きたい」「雇用形態を転換してもっと働きたい」と答えた人に対して、年収の壁がなくなったら、現在よりもっと働きたいと思う理由(複数回答)について質問したところ、「貯金をするため」が73.2%と最も高く、次いで「世帯収入を増やしたいため」が67.4%、「自分で好きに使えるお金を増やしたいため」が50.7%、「自分の生活費のため」が43.1%となった。

 今後も、令和6年10月には社会保険の適用範囲がさらに拡大することが決定しており、その影響を受ける企業も多く、また対象となるパート・アルバイトもこれを機会に働き方を変えようとする動きもあるはずだ。企業側は余裕をもって早めに準備し、現状分析や今働いている主婦のパートタイマーの意向なども確認できる範囲で進めておきたいところである。
参照:
庄司 英尚(しょうじ・ひでたか)
株式会社アイウェーブ代表取締役、アイウェーブ社労士事務所 代表
社会保険労務士 人事コンサルタント

福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所(現・アイウェーブ社労士事務所)を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続き及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。

公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/

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