少子化対策の制度導入、約半数の企業が「影響あり」

庄司 英尚
2023.08.07

法改正により育休復帰後の柔軟に働ける環境づくりへ
 少子化対策として、3歳までの子どもを持つ従業員の在宅勤務やフレックスタイム制の適用、就学前までの残業免除権の拡大などが検討されている。育児休業後、復帰しても柔軟に働ける環境を整えることで、希望する人が子どもを産みやすい、そして育てやすくすることが狙いである。

 これを受けて東京商工リサーチは6月1日~8日、全国の企業を対象に「少子化対策」に関するアンケート調査を実施した。「3歳までの在宅勤務」「3歳までのフレックスタイム制の適用」「就学前までの残業免除権の拡大」のうち、1つ以上の導入で「業務に支障が出る」と回答した企業は、半数(49.9%)を占めたことが明らかになった。

 コロナ禍を契機に在宅勤務やフレックスタイム制が広がり、仕事と育児の両立支援の地盤ができているとはいえ、まだまだ課題もたくさん残っており、企業側の意見や現場で働く人の声なども参考にする必要があるといえるだろう。
「3歳までの在宅勤務」は「業務支障あり」との回答が最も多い
 支援策別では、「支障あり」の回答率では、「3歳までの在宅勤務」が38.1%と最も高かった。次いで、「3歳までのフレックスタイム制の適用」が26.1%、「就学前までの残業免除権の拡大」が23.7%だった。

 コロナ禍で経験した「在宅勤務」については、社内コミュニケーションなどへの影響も指摘されており、効率化には弾力的な運用も必要であると分析している。一方で「就学前までの残業免除権の拡大」については、現在も3歳未満の子をもつ従業員には所定労働時間を超える残業免除権があるのでその拡大ということでいえば、対応はイメージしやすいのではないだろうか。
中小・零細企業は出産や育児を行う世代の雇用抑制につながる?
 従業員数別でみると、「支障あり」が最も高かったのは「300人以上」の59.7%。一方、「5人未満」は25.7%で、両者の差は34.0ポイントの開きがあった。

 従業員数が少ないほど「支障あり」と回答した企業が少ない傾向がみられた。中小・零細企業は、従業員の高齢化や採用難などで少子化対策の両立支援策が必要な年代が少ないことも要因と思われる。

 支援策が広がると従業員が育児に取り組みやすくなる一方、中小・零細企業では出産・育児を行う世代の雇用をさらに抑制することが危惧される。中小・零細企業でも、若手を育成し、長期的に事業を存続させることも考えていかなければならないので、いずれにしても乗り越えていかなければならず、工夫して運用していかなければならない。

 政府の狙いもわかるが、産業、業種によっては現実的には無理な制度もあるのは確かであり、最終的な結論が出る前に例外や特例などが設けられるのかどうかにも注視していく必要がある。
参照:
庄司 英尚(しょうじ・ひでたか)
株式会社アイウェーブ代表取締役、アイウェーブ社労士事務所 代表
社会保険労務士 人事コンサルタント

福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所(現・アイウェーブ社労士事務所)を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続き及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。

公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/

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