男性の半数、採用面接で転勤できるか尋ねられる

庄司 英尚
2023.08.21

「残業や休日出勤できるかどうか?」42.8%
 日本労働組合総連合会(略称:連合)は、採用選考における就職差別の実態を把握するため、「就職差別に関する調査」を2023年4月にインターネットで実施し。最近3年以内に就職のための採用試験(新卒採用または中途採用)を受けた全国の15歳~29歳の男女1,000名の回答を集計し、その調査結果を発表した。

 採用試験の面接で質問されたことがあるものについて聞いたところ、「転勤ができるかどうか」(43.3%)、「残業や休日出勤ができるかどうか」(42.8%)、「家族に関連すること(職業、続柄、健康、病歴、地位、学歴、収入、資産など)」(37.7%)が特に高かった。

 男性に限ってみると、51.3%の人が「転勤ができるかどうか」という質問を受けている。「転勤ができるかどうか」も含めて上記にあげた3つの質問内容は応募者の適性や能力とは関係がないので、面接においては適性や能力に直接関係のない質問をしないよう留意すべきとされているが、現場ではまだまだ理解が進んでいないところもあるようだ。
「尊敬する人物に関すること」も聞いてはいけない
 面接で面接官が聞いてはいけない質問だと思うものを複数候補から選んでもらったところ、「宗教に関すること」(56.7%)と「支持政党に関すること」(50.1%)が特に高く、半数を超えた。面接で宗教や政治について質問するのはNGだと理解できている人が多数派となった。

 次いで、「思想に関すること」(41.4%)、「家族に関すること(職業、続柄、健康、病歴、地位、学歴、収入、資産など)」(41.2%)、「住宅状況に関すること(間取り、部屋数、住宅の種類、近郊の施設など)」(34.4%)となった。他方、「本籍地や出生地に関すること」(25.9%)、「購読新聞・雑誌・愛読書などに関すること」(20.4%)、「尊敬する人物に関すること」(11.0%)は低位に留まっており、面接では不適切とされる質問内容について、面接官、求職者とも理解をもっと深めていかなければならない。
人権意識が欠如していては、Z世代を採用できない
 千葉商科大学国際教養学部の准教授である常見陽平氏は、連合のこの調査結果に対する解説・講評の中で、「1990年代後半以降に生まれたZ世代の特徴は、人権や環境などの問題について関心が高いこと」と捉えており、「日本企業の採用活動は人権に関する意識がまだまだ希薄であると言わざるを得ない。応募者の適性や能力と関係ない質問も根強く残っている。求職者の人権を侵害する質問、曖昧な採用基準を放置していいのか」と苦言を呈し、「現在は空前の人手不足の時代である。人権に無頓着な企業に採用氷河期は乗り越えられない。未来を創るために、Z世代から選ばれるために、企業も変わらなくてはならない」と指摘している。

 人事部等の採用担当者は人権への配慮はできるし、不適切な質問もしないと思うが、面接は現場の管理職なども担当するので、面接官として担当する以上は人権への配慮等を徹底していかなければならない。企業の代表者として面接を行うということがどれだけ重要なのかをあらためて社内で議論し、しっかりと対応していただきたい。
参照:
庄司 英尚(しょうじ・ひでたか)
株式会社アイウェーブ代表取締役、アイウェーブ社労士事務所 代表
社会保険労務士 人事コンサルタント

福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所(現・アイウェーブ社労士事務所)を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続き及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。

公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/

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