外形標準課税、資本金基準の変更を検討か?

村田 直
2023.11.02

“外形標準外し”が多発、当局も問題視?
 平成16年度以後、法人事業税のうち、資本金1億円超の普通法人には、収益配分額(報酬給与額、純支払利子及び純支払賃借料の合計額)と単年度損益との合計額を課税標準とする付加価値割と、資本金等の額を課税標準とする資本割からなる外形標準課税が課されている。

 近年、資本金を1億円以下に減資する例が一定数見受けられる。経営上の様々な判断に基づいて実施されているものと推察されるが、中には、単に資本金を資本剰余金に振り替えるだけで、外形標準課税の回避のみを目的としているように見える例も散見され、令和5年度税制改正大綱でも、制度見直しの検討が明記されていた。

 上記の問題等に対応するため、総務省は「地方法人課税に関する検討会」を令和4年8月から開催しており、令和5年10月12日に開催された第7回検討会で、改正の方向性が示唆された。
地方法人課税に関する検討会、資本金基準に加えて、追加的基準の採用を検討
 検討会の資料によると、外形標準課税の対象法人数は、平成18年度から令和2年度にかけて3分の2に減少している。持株会社化・分社化等の企業の組織再編が進むなど、経済情勢の変化に伴い、企業経営のあり方も変容し、平成13年の商法改正、平成17年の会社法制定を背景に、資本金制度の柔軟化、減資手続の緩和が進んでいることも追い風となっている。

 対象法人数の減少に関して、検討会がサンプル調査したところ、様々な減少要因のうち「減資によるもの」が多いとの結果が出ており、資本金1億円以下への減資では、株主資本に影響を及ぼさない無償減資が多く、特に、財務会計上、資本金から資本剰余金へ項目振替を行う事例が多いと指摘されている。

 事業部門分社化の際に子会社の資本金を1億円以下に設定するなど、企業活動の実態が変わらない一方で、外形標準課税の対象となる部分が大幅に縮小している事例も見られ、資本金1億円以下への減資や持株会社化・分社化により資本金を1億円以下に設定する動きについては、課税方式の選択を意図して資本金の額を設定するといった企業行動につながっている場合もある、としている。

 対応策としては、小規模な企業への影響に配慮するとともに、必要以上に多くの法人に制度見直しの影響が及ばないよう、現行の「資本金1億円超」基準を基本的に維持しつつ、公平性等の観点から、減資・組織再編の動きに対応するための追加的な基準を付け加えることが考えられるとして、「資本金と資本剰余金の合計額」と税法上の「資本金等の額」のいずれかを採用する方針で、検討が進められている。

 現段階では全くの白紙であるが、年末の税制改正大綱に何らかの改正が盛り込まれる可能性があるため、今後の動向を注視しておきたい。
参考:
村田 直(むらた・ただし)
マネーコンシェルジュ税理士法人
税理士

大阪府茨木市出身。大学卒業後、会計事務所勤務を経て現法人へ。平成22年3月税理士登録。法人成り支援や節税対策・赤字対策など、中小企業経営者の参謀役を目指し、活動中。年に数回の小冊子発行など、事務所全体で執筆活動にも力を入れている。

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