知っておきたい「年金額を増やす方法」

岡﨑 一恵
2026.02.19

 前回(No.4976)は、「就労延長」「私的年金等」「公的年金」を組み合わせるWPP理論についてお話し、抑えの公的年金を繰下げ受給する「継投」により、準備すべき老後資金を抑えられることを、事例をもとにお伝えしました。今回は、繰下げ受給以外の「公的年金額を増やす方法」についてお話しします。
なるべく長く厚生年金に加入して働き続ける
 公的年金は、予想外に長生きしてしまうリスクに備える「保険」です。年金受給額は、国民全員(20歳以上60歳未満で日本に住所を有する人)が加入する定額の基礎年金(1階部分)と、加入期間と収入に応じて保険料や受給額が変動する厚生年金(2階部分)の合計となります。

 基礎年金は480か月(40年)納付することで満額の年金を受け取れますが、厚生年金には満額という概念が存在しません。70歳になるまで加入することができ、65歳からの年金受給後も加入し続けることができます。

 年金額を増やす方法の一つは、厚生年金に加入し、なるべく長く高収入で働き続けることです。厚生年金は加入期間と収入の両方が年金額に反映されるため、加入し続けることは公的年金額を増やす最も直接的な方法といえます。
国民年金額が減額されるケースは?
 国民年金の保険料は、原則として20歳から60歳になるまで支払う義務があります。60歳までに国民年金の納付済期間が40年に満たない場合、その不足月に応じて年金額が減額されます。

 年金加入期間が40年に満たないケースとしては、学生時代の未加入や転職等による未納期間、「学生納付特例制度」を利用した期間、免除や猶予の期間などが考えられます。
納付の免除・猶予後は「追納」が必要
 学生納付特例制度は、前年所得が基準以下の学生が対象となる、国民年金保険料の納付猶予制度です。前年所得の目安は、「128万円+(扶養親族等の数×38万円)」で計算した額以下です(令和8年2月時点)。

 学生納付特例制度を利用した期間は、老齢基礎年金を受け取るために必要な「受給資格期間」には算入されますが、将来受け取る老齢基礎年金額には一切反映されません。そのため、卒業後に収入を得られるようになってから、猶予期間分の保険料をさかのぼって納めることができる「追納制度」があります。また、経済的に納付が難しく免除や猶予を受けた期間も、後から保険料を追納することで将来の受給額を増やすことができます。

 なお、学生時代の未加入や転職等による未納の場合、追納はできませんが、納付期限から2年以内であれば保険料を納めることができます。
追納のタイミングにより納付額が変わる場合も
 追納の期限は10年ですが、追納のタイミングによって納付する保険料額が変わる点に注意が必要です。免除などを受けた期間の翌年度から数えて3年度目以降に追納する場合は、当時の保険料額に一定の加算額が上乗せされてしまいます。

 なお、追納の期限を過ぎてしまった場合でも、60歳から65歳までの間に国民年金の「任意加入制度」を利用すれば、年金額を増やすことができます。
任意加入により老齢基礎年金の増額が可能
 国民年金への任意加入には、主に次の①~④のすべての条件を満たす必要があります。
日本国内に住む60歳以上65歳未満の人
老齢基礎年金を繰上げ受給していない人
20歳以上60歳未満までの保険料納付月数が480か月(40年)未満の人
厚生年金などに加入していない人
 任意加入により、65歳から受け取る老齢基礎年金を増やすことができ、納めた保険料は社会保険料控除の対象となります。こうした制度を活用して、年金額を減らさない心がけも大切です。
iDeCoや私的年金による上乗せも
 2025年の改正では私的年金も見直され、60歳から70歳にかけて、引き続きiDeCoを活用した老後の資産形成を継続できるようになりました。60歳以降、iDeCoに加入・拠出できるのは、会社員などの第2号被保険者と、国民年金の任意加入被保険者です。公的年金額を直接増やすものではありませんが、老後の収入全体を底上げする手段として有効です。自分の年金記録を正確に把握し、働き方や家計の見直しなど、早めの対策を検討しましょう。
参考:
岡﨑 一恵(おかざき・かずえ)
社会保険労務士岡崎一恵事務所 代表
社会保険労務士
1級ファイナンシャルプランニング技能士、CFP®認定者

滋賀県大津市出身。同志社大学卒業後、地方銀行の人事部に勤務。
子育てのブランク9年と、紆余曲折の後、社会保険労務士として2018年開業。
2021年CFP®認定者として登録、2023年「くらしとお金のFP相談室」相談員、2024年日本FP協会FP広報センタースタッフを務める。
NPO法人障害年金支援ネットワークに所属。
地元横須賀の中小企業の労務管理と、障害年金代理請求業務、障害年金を受給されるご家庭のライフプラン相談に取り組む。

公式サイト https://www.okazakikazue.net/

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