老齢年金の増額に繰下げ受給を工夫

西海 重尚
2023.12.18

老齢年金の受給開始年齢を繰り下げれば年金額が増額
 老齢年金は老後資金の中心となるものである。しかし、現役時代に多額の年金保険料を支払っているにもかかわらず、将来、それに見合った年金額が受け取れるのかというとそうはいかないのが現状である。であれば受け取れる年金額を少しでも増やすために、受け取り方の工夫を考えたい。

 老齢年金である老齢基礎年金や老齢厚生年金の受給開始年齢は、原則65歳である。受給開始年齢を66歳以降に遅らせると、年金額は1ヵ月あたり0.7%ずつ増額していく。受給開始年齢が70歳であれば42%の増額、75歳であれば84%の増額になる。
老齢基礎年金と老齢厚生年金の繰下げ受給の年齢は別々に設定が可能
 繰下げ受給の年齢は、老齢基礎年金と老齢厚生年金を同時に設定する必要はない。別々に設定することができる。したがって老齢年金を繰下げ受給する方法は3つあるということになる。
「老齢基礎年金」「老齢厚生年金」いずれも繰下げ受給する
「老齢基礎年金」のみ繰下げ受給する
「老齢厚生年金」のみ繰下げ受給する
老齢基礎年金は満額受け取る
 老齢基礎年金を満額受け取るためには、受給要件を満たしたうえで、40年の保険料納付済期間が必要となる。学生であったため国民年金保険料を納付していなかったなどの理由で、未納となっているケースも多い。保険料の免除や猶予、特例制度を受けていれば10年以内であれば追納ができるし、60歳から65歳になるまでの最大5年間、任意加入制度を利用することにより保険料の納付が可能である。これらを利用することで40年の保険料納付済期間を確保して、老齢基礎年金を満額受け取れるようにしておきたい。
加給年金に注意
 加給年金は、夫が厚生年金に20年以上加入しており、65歳到達時点(または定額部分支給開始年齢に到達した時点)で、年下で生計を維持している妻がいる場合、原則として、妻が65歳になるまで年額約40万円(夫の生年月日により異なる)が受給できる。夫が老齢厚生年金を繰下げ受給すると、その期間は加給年金が受給できなくなる。そのため65歳で老齢厚生年金のみを請求し、老齢基礎年金は繰下げ受給するという手が考えられる。夫婦の年齢差などによって有利な受取方法が変わってくるので、正確なところは年金事務所などに相談して確認すると良い。
老後資金に備えるには自助努力も必要
 たとえば老齢基礎年金のみ繰下げ受給をした場合、繰り下げている期間中は、その分少ない年金で生活しなければならない。老齢年金だけに頼らずに、貯蓄や資産運用、定年退職後の就労により老後資金に備えておく必要がある。
西海 重尚(にしうみ・しげひさ)
西海FP事務所 代表
CFP®認定者、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、終活アドバイサー、公的保険アドバイザー

慶応義塾大学経済学部卒。
33年間のサラリーマン生活において大手損害保険会社、生命保険会社、FP系出版社に勤務。
現在は独立系FPとなり、生命保険と相続の身近な相談相手として活動中。

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