退職代行サービス、認知度72%に対し利用は2%にとどまる

庄司 英尚
2024.01.15

若年世代には、かなりの割合で認知されている
 エン・ジャパン株式会社は、運営する総合求人サイト「エン転職」上で、ユーザーを対象に「退職代行」について2023年8月29日~9月26日にかけてアンケートを実施し、7,749名から回答を得た。退職代行とは、労働者本人に代わって弁護士や代行業者が会社に退職の意思を伝えるサービスのこと。

 退職代行サービスは近年テレビ、インターネット及びSNSなどさまざまなメディアで見かけるようになったが、実際のところは10年以上も前から弁護士が行う業務の1つとして存在しているものである。所属している会社で退職代行業者と関わったことがある人や身近にサービスを利用した人を知っているという人は以前に比べれば少しずつ増えてきており、その実態は確かに気になるところである。

 今回の調査結果によると、「退職代行というサービスを知っていますか?」という質問に72%が「知っている」と回答。年代別認知度では、40代以上が64%に対し、20代では83%、30代では78%とその差は大きく、若年世代により認知されていることが明らかになった。
サービス利用の理由トップ「退職を言い出しにくかったから」
 次に「退職代行サービスを利用したことがありますか?」という質問には、93%が「ない」と回答。「ある」と回答したのは、2%にとどまったが、「自分ではなく、同僚や知人が利用した」と回答したのは5%となっており、今後利用者が増える可能性はあるだろう。

 「退職代行サービスを利用したことがある」と回答した方に退職代行を利用した理由を伺ったところ、理由のトップは「退職を言い出しにくかったから」(50%)で、次いで「すぐに退職したかったから」(44%)、さらに「人間関係が悪かったから」「パワハラやセクハラの被害に遭っていたから」「退職を認めてもらえなかったから」という回答が並ぶ。社内風土や職場環境面などから利用せざるを得なかった人も結構多いことが窺える。
42%は「今後、状況によっては使うかもしれない」
 「今後、退職代行を利用したいですか?」という質問には、「使いたいとは思わない」が31%に対して、「状況によっては使うかもしれない」が42%となった。使うかもしれないと答えた人に理由を伺ったところ、「職場に行けないくらい追い詰められてしまったなど、自分の精神が拒否してしまったものに対して無理に立ち向かわなくていいと思うから」や「基本的には自分で会社に伝えるべきだと思うが、パワハラなどで辞めさせてもらえないなど、自分1人では解決できない場合は利用するかもしれない」という意見があった。置かれた状況次第では利用する可能性があるとはっきりコメントしており、サービスを利用することへのためらいはあまりなさそうだ。

 退職代行サービスを利用したことがある方に「どのような環境や条件があれば、退職代行を利用しなかったと思いますか?」と伺ったところ、第1位は「上司が話しやすい」(60%)、次いで「職場の人間関係がよい」(56%)、「退職意向をきちんと認めてくれる風土がある」(42%)となっている。会社としてはまずは自社の状況がこのような組織や風土になっているかをチェックして、もし改善すべき点があれば早急に対応していくことが必要である。
参照:
庄司 英尚(しょうじ・ひでたか)
株式会社アイウェーブ代表取締役、アイウェーブ社労士事務所 代表
社会保険労務士 人事コンサルタント

福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所(現・アイウェーブ社労士事務所)を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続き及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。

公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/

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