教育資金や結婚・子育て資金の一括贈与が非課税になる2つの制度

森田 和子
2024.04.11

 教育費などを将来の分までまとめて渡しておきたい場合に利用できるのが、教育資金贈与の特例と結婚・子育て資金贈与の特例です。期間限定の制度でしたが、何度か延長され、教育資金贈与の特例は2026年3月末まで、結婚・子育て資金贈与の特例は2025年3月末までとなっています。制度開始時からは変更された点もあるので、この制度をこれから使う場合について内容を確認していきましょう。
教育資金を1,500万円まで非課税で贈与
 「教育資金贈与の特例」と呼ばれるのが、「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税」です。父母や祖父母から教育資金を1,500万円まで非課税で贈与してもらえます。受け取ることができるのは30歳未満で、前年分の合計所得金額が1,000万円以下の人です。

 利用するには、この教育資金口座を取り扱う信託銀行、銀行、証券会社で口座を開設し、資金を預け入れます。口座からお金を引き出す時には、金融機関に領収書などを提出します。
 教育費として認められるのは、
(1)
授業料・給食費・修学旅行費などの学校等に直接支払われる費用や、学校等での教育に必要な費用
(2)
塾や習い事の費用、通学定期代や留学の渡航費など学校等以外に直接支払われる費用
などです。(2)の費用については、500万円が限度額で、23歳以後は、教育訓練給付金の対象となる受講費用に限られます。

 口座の資金を使い切った時や、贈与を受ける人が30歳(在学中などの場合は40歳)に達した時、死亡した時には口座は終了し、残金があれば、原則として贈与税の課税対象になります。贈与した人が贈与から3年以内に死亡した場合、贈与を受けた人が在学中でなく、23歳以上である場合などには、口座の残金が原則、相続税の課税対象になります。(※1、※2)
結婚・子育て資金を1,000万円まで非課税で贈与
 「結婚・子育て資金贈与」と呼ばれるのが「直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税」です。父母や祖父母から結婚・子育て資金を1,000万円まで非課税で贈与してもらえます。受け取ることができるのは、18歳以上50歳未満で、前年分の合計所得金額が1,000万円以下の人です。利用するには、結婚・子育て資金口座を取り扱う信託銀行、銀行、証券会社で口座を開設し、資金を預け入れます。口座からお金を引き出す時には、金融機関に領収書などを提出します。
 結婚・子育ての費用として認められるのは
(1)
挙式費用や家賃・敷金などの新居費用
(2)
妊婦検診・不妊治療・産後ケアなどの費用や、子の医療費、幼稚園・保育園の保育料
などの費用です。(1)の費用については、300万円が限度となります。

 口座の資金を使い切った時、贈与を受ける人が50歳に達した時や死亡した時には口座は終了し、残金があれば、原則として贈与税の課税対象になります。贈与した人が死亡した場合には、在学中などの状況に係わらず口座の残金が原則、相続税の課税対象になります。(※2)
今必要な教育費や生活費に贈与税はかからない
 「おじいちゃんに学費を支払ってもらったら贈与になりますか?」というご質問を受けることがありますが、学校から送られた振込用紙で、祖父母が学費を支払ってくれても贈与税はかかりません。今必要な生活費や教育費などを祖父母が負担しても、通常認められる範囲のものであれば贈与税はかからないとされているからです。それでも、先にまとめて渡しておきたい場合には、教育資金贈与の特例や結婚・子育て資金贈与の特例を検討するとよいでしょう。2つの制度は併用することもできます。
※1:
贈与した人に係る相続税の課税価格の合計額が5億円を超えるときは、23歳以下等であっても口座の残金が相続財産に加算される場合があります。
※2:
贈与を受けた人が贈与した人の子以外(孫など)の場合には、相続税額の2割加算が適用される場合があります。
参考:
森田 和子(もりた・かずこ)
FPオフィス・モリタ 代表
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®認定者、DCA(確定拠出年金アドバイザー)

大学卒業後、コンピュータソフト会社、生命保険会社勤務を経て、1999年独立。保険や投資信託の販売をしない独立系のファイナンシャル・プランナー事務所としてコンサルティングを行っている。
お金の管理は「楽に、楽しく」、相談される方を「追い詰めない」のがモットー。情報サイト・新聞・雑誌への執筆多数。企業・学校・イベントで行うマネープランセミナー・講演も好評。

ライフプランシミュレーションとマイホーム・老後の資金計算
FPオフィス・モリタ https://fpofficemorita.com/
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