8割は働く喜びが必要と思っても、働く喜びを感じているのは4割

庄司 英尚
2024.07.29

多くの人が働く喜びを求めているが、その実感を得られていない現実
 株式会社リクルートが発表している「働く喜び調査2013─2023年の変化」のレポートは、同社が2013年より毎年、全国の15~64歳の就業者約5,000~12,000人を対象に実施してきた仕事に関するアンケート調査11年分の経年データを基に、働く人の喜び実感の状況やその影響要因の変化についてまとめたものだ。

 調査結果によると、「仕事をする上で働く喜びは必要だと思うか?」という設問に対し、最新の2023年調査では83.3%の人が「働く喜びが必要だ」(とても必要だと思う、必要だと思う、やや必要だと思うの合計)と回答している。過去のデータを見ると、最高は2019年の88.2%、2017年だけ78.6%だが、毎年80%以上の人が必要だと回答していることが明らかになった。

 ところで、働く喜びの実感はどの程度の人が持っているのだろうか。「この1年間、働くことに喜びを感じていたか?」の設問に対し、最新の2023年調査では42.6%が「働く喜びを感じている」(非常に感じている、感じている、やや感じているの合計)と回答している。過去のデータを見ると、最高はこちらも2019年で44.5%、2015~2017年は40%未満に落ち込むが、それ以降は2019年を除き42~43%台で推移している。

 「働く喜びは必要」と思っている人は8割いるにもかかわらず、実際に「働く喜びを感じている」人は4割にとどまっている状況はどこに理由があるのか、「働く」に関する具体的な項目の経年変化などから掘り下げてみたい。
希望がかなえられている、見合った収入を得ているは年々増加傾向に
 働くことに関する具体的な項目のうち、この11年間でおおむね右肩上がりに増加しているものは、「思い続けてきた希望がかなえられている」と「仕事の内容に見合った収入を得ている」と回答した人(あてはまる、ややあてはまるの合計)の割合だ。「希望がかなえられている」のほうは2013年の20.2%から2023年の29.3%へ9.1pt増加、「見合った収入を得ている」のほうは2013年の27.3%から2023年の37.9%へ10.6pt増加している。

 反対に、「職場に自分の居場所がある」と回答した人(あてはまる、ややあてはまるの合計)の割合は年々減少傾向を示しており、2013年の66.2%から2023年の55.3%へ10.9ptも減った。この傾向はコロナ禍前から始まっており、リモートワークなどによる柔軟な働き方が一般的になってくるにつれて、心理的な距離が遠くなり、つながりを感じる機会が減少して疎外感を抱くようになったことも理由の1つだと考えられる。

 同レポートの分析によると、良い点として、希望がかなえられている人の割合の増加と、仕事の内容に見合った収入を得ている人の割合の増加を挙げている一方で、改善が必要な点として、職場に自分の居場所があると実感している人の割合の減少と、働く喜びを多くの人が求めているのにその実感を得ている人が少ないことを挙げている。各企業としてはそのような環境下であっても従業員個人が働く喜びを感じることができるようにどのように工夫していけばよいのか同レポートを参考にして考えるきっかけとしたい。
参照:
庄司 英尚(しょうじ・ひでたか)
株式会社アイウェーブ代表取締役、アイウェーブ社労士事務所 代表
社会保険労務士 人事コンサルタント

福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所(現・アイウェーブ社労士事務所)を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続き及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。

公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/

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