障害年金~初診日~

三角 桂子
2024.12.12

 「障害年金」は、病気やケガによって生活や仕事などが制限されるようになった場合に、受け取ることができる年金です。

 「年金」と聞くと、高齢期に受け取る老齢年金を想像されることも多く、若い世代の人にとっては、「自分には関係ない」「どうせ受け取ることができない」などと考えられがちですが、公的年金は「老齢年金」「遺族年金」「障害年金」と3種類あり、現役世代の人にとっても大きく関わってくる年金です。

 年金は法改正が多く、複雑で分かりづらいといわれていますが、今回は障害年金にスポットを当ててお伝えしていきます。
初診日が大事
 障害年金には「障害基礎年金」「障害厚生年金」があり、病気やケガで初めて医師または歯科医師の診療を受けた日を初診日といいます。初診日に国民年金に加入していた場合は「障害基礎年金」、厚生年金に加入していた場合は「障害厚生年金」が請求できます。

 例えば、Aさんが会社に勤めていた時に病気になったとしましょう。会社を辞める前に病院に行き診察を受けます。その後病状が悪化したため、退職し国民年金に加入します。このままでは収入がなくなり、生活が厳しくなります。初診日から1年6ヵ月経過し、障害年金を請求するとします。

 Aさんは障害年金請求時には仕事を辞めて国民年金に加入中ですが、初診日は厚生年金に加入中でした。そのため障害年金の請求は障害厚生年金での請求ができるのです。
初診日の証明が必要
 障害年金の請求では、初診日の証明が不可欠です。障害年金は、障害の原因となる傷病が発生する以前に、保険料を一定期間納付していることなどが受給要件となります。そのため、初診日を特定するために初診日の証明書類が必要となります。

 ずっと同じ医療機関で受診しているのであれば、診断書で初診日が明確になりますが、転院している場合は、初診日を証明するために「受診状況等証明書」が必要となります。

 例えば、ケガをした場合は、ケガをした当日に医療機関を受診するでしょう。そのため初診日が分かりやすいのですが、徐々に悪化する病気など、長期間にわたり進行する病気などでは、「いつが初診日かわからない」「どこの医療機関に受診したかもわからない」という人も少なくありません。

 また、医療機関のカルテの保存期間が5年であるため、医療機関がわかっていても証明できないということもあります。この場合は、「受診状況等証明書が添付できない申立書」「初診日に関する第三者からの申立書(第三者証明)」が必要となります。

 例えば、初診日の医療機関の受診状況などが確認できる参考資料として、身体障害者手帳やお薬手帳などがあげられます。
いざという時のために
 上記のように、初診日は障害年金を請求するにあたって、とても重要です。障害年金のご相談にいらっしゃる方の中には、「こんなことになるとは・・・」と、初診日が特定できずに障害年金の受給が認められないケースもあるようです。いざという時のために医療機関の書類や健康診断の書類など、保管しておくことが大切です。
参考:
三角 桂子(みすみ・けいこ)
社会保険労務士法人エニシアFP 代表社員
FP・社会保険労務士

大学卒業後、公務員、専業主婦、自営業、会社員、シングルとあらゆる立場を経験し、FPと社会保険労務士として開業し、5年目に法人化(共同代表)。
FPと社会保険労務士の二刀流を強みに、法人・個人の労務、年金の相談業務やセミナー、執筆など、幅広く行っている。
常に自身の経験を活かし、丁寧な対応を心がけ、生涯現役に向かって邁進中。
法人名はご縁(えにし)に感謝(ありがとう)が由来。

公式サイト https://sr-enishiafp.com/

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