年金額の提示に「多様なライフコースに応じた年金額」が追加

三角 桂子
2025.03.24

 2025年1月24日に、厚生労働省から令和7年度の年金額改定が発表されました。プレスリリースによると、年金額は前年度から1.9%の引上げです。

 年金額は、物価と賃金の変動率によって毎年度改定されます。年が明けると翌年度の年金額の発表が気になるところですが、今回の発表から新たに「多様なライフコースに応じた年金額」が追加されました。
モデルケースと多様なライフコースに応じた年金額
 2024年11月5日の第19回社会保障審議会年金部会にて、多様なライフコースに応じた年金の給付水準の示し方について審議され、「多様なライフコースに応じた年金額」が追加されることになりました。

 年金のモデルケースは、夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額とされています。男性の平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)45.5万円)で40年間就業した場合に受け取り始める年金額(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))であり、いわゆる「夫が外で働き、妻は家庭を守るべきである」という、日本の高度経済成長期ごろからの家庭の在り方がモデルケースになっています。

 しかしながら、現在は共働き世帯や単身世帯が増えたことから、モデル年金以外の多様な世帯の年金額が示されました。具体的には、単身世帯の賃金水準に応じた年金額と、その組み合わせに応じた多様な世帯構成の年金額です。

 2024年の財政検証において、個人単位での公的年金加入履歴から、各世代の65歳時点における老齢年金の平均額や分布の将来見通し(年金額の分布推計)が、次の5通りの経歴類型・男女の別で示されました。
厚生年金期間中心(20年以上)の男性
国民年金(第1号被保険者)期間中心(20年以上)の男性
厚生年金期間中心(20年以上)の女性
国民年金(第1号被保険者)期間中心(20年以上)の女性
国民年金(第3号被保険者期間)中心(20年以上)の女性
 世帯の年金額は上記の年金額の組み合わせとなります。例えば、共働き世帯は「①+③」、「夫が働き妻は家庭」の世帯は「①+⑤」、国民年金中心の世帯は「②+④」となります。
まとめ
 現在、年金を受給している方の多くは、前段の「夫が外で働き、妻は家庭を守るべきである」世代の方が中心であることから、「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」では、男性の年金受給額の方が高くなっています。共働き世帯が主になってきた世代の方が年金を受給する割合が高くなると、年金受給者の平均年金月額の男女差が解消されてくると考えられます。

 今後も多様な働き方、家族形態の変化に応じて検討することは、若い世代の方が年金についてイメージしやすくなり、関心が高まることにつながるのではないでしょうか。
参考:
三角 桂子(みすみ・けいこ)
社会保険労務士法人エニシアFP 代表社員
FP・社会保険労務士

大学卒業後、公務員、専業主婦、自営業、会社員、シングルとあらゆる立場を経験し、FPと社会保険労務士として開業し、5年目に法人化(共同代表)。
FPと社会保険労務士の二刀流を強みに、法人・個人の労務、年金の相談業務やセミナー、執筆など、幅広く行っている。
常に自身の経験を活かし、丁寧な対応を心がけ、生涯現役に向かって邁進中。
法人名はご縁(えにし)に感謝(ありがとう)が由来。

公式サイト https://sr-enishiafp.com/

▲ PAGE TOP