会社に義務付けられている健康診断の種類とその対象者

庄司 英尚
2025.11.10

健康診断の実施義務は、知らなかったでは済まされない
 労働安全衛生法の規定に基づき、会社は従業員に対して医師による健康診断を実施しなければならず、また従業員は会社が行う健康診断を受けなければならない。中小零細企業や創業したばかりの会社では経営者が健康診断に関してよく理解できていないケースも多い。今回は、健康診断の基本的な事項について整理しておく。

 健康診断には、会社に実施義務があるものとして一般健康診断と特殊健康診断がある。一般健康診断のうち特に押さえておきたいのは下記の3つである※1
※1
一般健康診断にはこの他に、海外派遣労働者の健康診断と給食従業員の検便がある。
①雇入時の健康診断
 雇入れの際に実施すること。ただし、その者が雇い入れ3か月前以内に医師による健康診断を受けていて、その健康診断結果を提出できる場合は、重複する項目については省略できる。
②定期健康診断
 1年以内ごとに1回実施すること。各事業所が定める一定の時期に実施しなければならない。
③特定業務従事者の健康診断
 労働安全衛生規則第13条第1項第2号に掲げる業務※2に常時従事する者に対して配置替えの際、6か月以内ごとに1回実施しなければならない。
※2
高熱、寒冷、有害放射線、有害物質、有害ガス、坑内、振動、騒音、病原体汚染、深夜など、労働者にとって有害・危険な特定の業務のこと。
 特定業務従事者の中で特に気をつけたいのが「深夜業を含む業務」にあたる従業員だ。深夜業を含む業務とは、就業時間(残業等含む)に午後10時~午前5時の間の勤務が含まれている(この時間帯に勤務した時間数の長短は関係なし)業務のこと。常態として深夜業を週に1回または1か月に4回以上行っている者は「深夜業に常時従事する労働者」に該当し、6か月以内ごとに1回、健診を受けねばならない。

 一方、特殊健康診断とは、労働安全衛生法第66条第2、第3項に定められている健康診断及びじん肺法第3条に定められている健康診断だ。有機溶剤、鉛、放射線、粉じんなど特に有害と判断される業務に常時従事する従業員を対象とし、有害業務に起因する健康障害の状況を調べる。原則として、雇入時、配置替えの際及び6か月以内ごとに1回※3実施しなければならない。
※3
じん肺健診は管理区分に応じて1~3年以内ごとに1回。
健康診断を実施しないといけない対象者とは?
 前述の定期健康診断の対象となるのは、常時雇用する従業員である。常時雇用する(契約期間の定めがない)従業員とは、正社員だけでなく、契約社員・パート・アルバイトであっても下記の要件をいずれも満たす場合には実施義務があるので注意しなければならない。
契約更新により1年以上の雇用実績がある者、または契約更新により1年以上の雇用継続が見込まれる者
1週間の労働時間が正社員の労働時間の4分の3以上ある者
 健康診断は現在の健康状態を調べ、病気の早期発見や予防につなげる目的があり、会社にとっても従業員にとっても大変重要なものであり、決して軽視してはならない。所定の健康診断を実施しなかった場合、労働安全衛生法第120条により、50万円以下の罰金が科される可能性があるのでその点は留意してほしい。
参照:
庄司 英尚(しょうじ・ひでたか)
株式会社アイウェーブ代表取締役、アイウェーブ社労士事務所 代表
社会保険労務士 人事コンサルタント

福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所(現・アイウェーブ社労士事務所)を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続き及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。

公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/

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