知らなかったではすまされないインサイダー取引について

森田 和子
2026.01.08

 インサイダー取引は、内部情報にアクセスできる人が、未公開の重要な情報を利用して株式などを売買することです。そのような取引が行われると、情報を知っている内部の人は有利に、情報を知らない一般の投資家は不利になります。証券市場の信頼性が損なわれかねないので法律で禁止されています。これに違反した場合には罰則もあります。内容を見ていきましょう。
重要事実を聞いて取引した人も対象に
 インサイダーとは内部情報を知る立場にある人です。上場会社または親会社・子会社の役職員や大株主などの会社関係者、および会社関係者から重要事実の伝達を受けた情報受領者とされています。役員ではない一般社員の従業員であっても、また、上場会社で働いていない人であっても、会社関係者から直接重要事実を聞いた人は規制の対象です。その概要は、
(1)
上場会社の役職員等の会社関係者(会社関係者でなくなった後1年以内の者を含む)が、
(2)
その会社の業務等に関する重要事実(例えば、その会社が新株発行を行うことを決定した事実や、その会社の決算予想値に大幅な修正が生じた事実等)を、
(3)
自身の職務等に関して知った場合、
(4)
その重要事実が公表される前に、
(5)
その会社の株式の売買をしてはならないというものです。
 例えば、自社の会議やメールの内容から、決算予想値が大幅に上方修正されることを知り、公表される前に自社株式を買い付ける場合などです。反対に、決算予想値が大幅に下方修正されることを知り、公表される前に自社株式を売却する場合なども該当します。夫から重要事実を聞いた妻や、会社関係者から聞いた取引先がその株式の売買を行っても対象になります。
インサイダー取引には刑事罰も
 インサイダー取引規制に違反した場合には、5年以下の拘禁刑(刑事施設に収容する刑罰)もしくは500万円以下の罰金、または拘禁刑と罰金の併科となります。また、法人の役職員が、その業務・財産に関して違反行為をしたときは、その法人に対しても 5 億円以下の罰金刑を科す両罰規定が置かれています。刑事罰とはならないものであっても、行政上の措置として課徴金制度が適用された場合には、一定額を課徴金として国庫への納付が命じられることとなります。

 なお、インサイダー取引規制違反によって得た財産は原則として没収され、没収できないときは、追徴されます。

 インサイダー取引を行わないように注意するのはもちろんですが、公表前の情報を身近な人に話してしまうと、インサイダー取引のきっかけを与えてしまうかもしれません。お互いのために公表前の情報を外部には洩らさないことが重要です。金融庁では、インサイダー取引規制を正しく理解するためのQ&Aを公表しています。
参考:
森田 和子(もりた・かずこ)
FPオフィス・モリタ 代表
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®認定者、DCA(確定拠出年金アドバイザー)

大学卒業後、コンピュータソフト会社、生命保険会社勤務を経て、1999年独立。保険や投資信託の販売をしない独立系のファイナンシャル・プランナー事務所としてコンサルティングを行っている。
お金の管理は「楽に、楽しく」、相談される方を「追い詰めない」のがモットー。情報サイト・新聞・雑誌への執筆多数。企業・学校・イベントで行うマネープランセミナー・講演も好評。

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