年金法改正 老齢基礎年金は遺族厚生年金を受け取っていても繰下げ可能に

津路 伸江
2026.08.27

1.令和10年4月以後の老齢基礎年金の支給繰下げ
 改正前のしくみでは、老齢基礎年金の受給権者が65歳に達したときに、「他の年金給付(付加年金を除く国民年金からの年金給付または障害厚生年金、遺族厚生年金)」の受給権者であったときは、支給繰下げの申出はできませんでした。

 今回の改正で、「他の年金給付」のうち厚生年金保険法による遺族厚生年金が除かれました。つまり、65歳前に遺族厚生年金の受給権者となっても、老齢基礎年金の支給繰下げが可能となります。新たに適用されるのは、令和10年4月1日の前日において遺族厚生年金の受給権を有する人で、65歳に達していない人(昭和38年4月2日以後生まれの人)です。
2.遺族厚生年金を受給しながら老齢基礎年金を繰下げ
 65歳で老齢基礎年金の受給権を有する方は、希望すれば66歳以後に老齢基礎年金を繰下げて受け取ることができます。増額率は、受給権発生年月から繰下げの申出をした月の前月までの月数に0.7%を乗じた値となります。

 65歳以後も遺族厚生年金を受給しながら働き続けている場合、働いたことによる報酬と遺族厚生年金で生活可能ならば、老齢基礎年金を繰下げて、退職後や必要な時期から繰下げ増額した老齢基礎年金を受け取ることができます。

 具体例として、A子さん(62歳・昭和39年4月5日生まれ)は2年前に夫を亡くし、遺族厚生年金を90万円(夫の報酬比例部分の3/4)受け取っています。A子さんは現在、厚生年金保険に加入しながら、月20万円の報酬を受けています。希望すれば65歳以後も働き続けることができ、その場合、A子さんの1カ月の収入は27.5万円です。

 A子さん自身は満額の老齢基礎年金を受給でき、70歳で繰下げ請求した場合、繰下げ増額率は42%で、老齢基礎年金は1,203,166円(令和8年度価額水準)となります。
3.65歳からの遺族厚生年金と配偶者である妻の老齢厚生年金の扱い
 遺族厚生年金の受給権を有する妻が、65歳から老齢厚生年金を受け取れるようになると、自身の老齢厚生年金が優先支給となります。遺族厚生年金の額が多い時のみ、差額が遺族厚生年金として支給されます。

 遺族厚生年金額は、夫の報酬比例部分の3/4ですが、65歳以上の配偶者である妻の場合、この額と遺族厚生年金の2/3の額と妻自身の老齢厚生年金の1/2の額の合計額、いずれか多い方が遺族厚生年金額となります(図を参照)。
 前述のA子さんの場合、遺族厚生年金は90万円でした。A子さんが働き続け70歳で退職し、自分の老齢厚生年金額が70万円となれば、遺族厚生年金額は90万円×2/3+70万円×1/2=95万円となります。70歳で老齢基礎年金を繰下げ請求すると、老齢基礎年金は約120万円で、自分の老齢厚生年金70万円と差額支給の遺族厚生年金25万円と併せて、約215万円の年金見込額となります。

 繰下げ受給を希望する場合は、年金事務所または街角の年金相談センターで事前に相談することをお勧めします。
参考:
津路 伸江(つじ・のぶえ)
津路社会保険労務士事務所 代表
特定社会保険労務士
1級ファイナンシャルプランニング技能士

平成9年、横須賀にて津路社会保険労務士事務所設立。
地元企業の顧問を務め、労働・社会保険手続き、その他各種相談業務を行う。
労働基準監督署、社会保険事務所(当時)で受付等に従事。
労働講座の講師を8年、消費者センター主催の年金講座を10年務める。
平成28年、埼玉県北本市に事務所を移転。
年金事務所および街角の年金相談センター等で約15年、年金相談業務に従事。
各種検定業務の検定委員等を務める。

公式サイト:https://www.ntsuji-sr.com/office.html

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