保険会社の健全性を示す新たな指標「ESR」とは?

常國 誠一郎
2026.08.24

 2026年3月末決算から、国際的な保険資本基準(Insurance Capital Standard:ICS)の枠組みに準拠した新たな国内資本規制「経済価値ベースのソルベンシー規制」が導入されました。法令上は、引き続きソルベンシー・マージン比率という言葉が使われますが、経済価値で評価されたソルベンシー・マージン比率であることから、一般にESR(Economic Solvency Ratio)とも呼ばれています。今回はESRについて解説します。
従来のSMRの課題
 1996年の保険業法の改正により、保険会社の経営の健全性を示す指標のひとつとしてソルベンシー・マージン比率(Solvency Margin Ratio:SMR)が導入されました。この指標は、通常の予測を超えて発生するリスクに対応できる支払余力を、保険会社がどのくらい有しているかを判断するためのものです。FP試験や業界試験などで出題されることがあるため、「ソルベンシー・マージン比率が200%を下回った場合、内閣総理大臣により早期是正措置がとられる」と暗記した方も多いのではないでしょうか。しかし、2026年3月末決算から、従来のSMRに代わる新たな指標としてESRが導入されました。

 最も大きな変更点は、保険契約に係る負債(保険負債)の評価方法です。従来のSMRは保険負債を契約時点の利率で計算していたため、金利変動によって生じるリスクが正しく反映されないという課題がありました。

 一方、新たに導入されたESRは、原則として保険負債を含めたすべての資産・負債を、基準日時点の金利環境などを踏まえた経済価値評価に基づいて算出するため、一部の資産の変動のみが反映されるといった課題が解消され、足元の金利環境を踏まえた保険会社の健全性を、より先見的に確認できます。
早期是正措置の水準は200%から100%へ
 これまでは、「SMRが1,000%を超えている」ということも珍しくありませんでしたが、現在、一部の大手生保が公表しているESRは200%程度となっています。

 ESRの算出にあたっては、「厳格な信頼水準で評価」「広範なリスクをカバー」「経済環境の変化への感応度向上」に加えて、分母のリスク量に2分の1を掛けないため、比率が低く算出される傾向にあります。数値だけを見て、以前よりも健全性が低下したと勘違いしないようにしなければなりません。

 早期是正措置の水準は「200%未満」から「100%未満」に変わっています。生保各社のESRが200%程度であれば、行政監督上の基準である100%を十分に上回っていますので、健全性には問題がないと判断することができます。
ESRだけでなくさまざまな指標から総合的に判断を
 なお、ESRは経営の健全性を示す指標の1つであり、この比率だけで健全性の全てを判断すべきではありません。生命保険会社の健全性については、資産運用の状況や業績の推移等の経営情報、リスクテイクに関する生命保険会社の方針などから総合的に判断することが重要です。
参照:
(セールス手帖社 常國誠一郎)

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