病気やケガで働けないときのための「傷病手当金」

岡﨑 一恵
2026.08.24

 病気やケガで仕事を休むことになると、治療費だけでなく、収入が減ることも大きな不安になります。そんなときに生活を支えてくれるのが「傷病手当金」です。

 傷病手当金は、病気やケガのために働けなくなり、会社から給与が支給されないときに健康保険組合などから支給されます。どのような場合に支給されるのか、支給額はいくらなのかなど、知っておきたいポイントを解説します。
支給される条件は?
 傷病手当金は、次の4つの条件をすべて満たしたときに支給されます。
仕事とは関係ない病気やケガのために療養していること
仕事に就くことができない状態(労務不能)であること
休業した期間について給与の支払いがないこと
連続する3日間(待期期間)を含む4日以上仕事に就けなかったこと
 待期期間には有給休暇や公休日、祝日も含まれます。また、給与の支払いがあっても、その額が傷病手当金の日額より少ないときは、差額が支給されます。自宅療養でも対象となり、うつ病等の精神疾患でも支給されます。また、社会保険に加入しているパート勤務の方も支給対象です。
いくらもらえる?支給期間は?
 傷病手当金の1日あたりの支給額は、直近1年間の標準報酬月額の平均額を30日で割った額の3分の2です。支給期間は、支給を開始した日から通算して最長1年6か月です。

 ただし、条件を満たせば自動的に支給されるものではありません。受給するためには請求手続きが必要です。

 また、傷病手当金の請求には時効があります。原則として、仕事に就けなかった日ごとに、その翌日から2年間です。請求可能な期間を過ぎてしまわないよう、早めに手続きを行うことが大切です。
傷病手当金を受給するときの注意点
 傷病手当金を受給している期間も、社会保険料の負担は必要です。給与からの天引きができないため、会社から別途支払いを求められることがあります。

 また、住民税の負担もあります。傷病手当金は、給与のおおむね3分の2の額ですが、社会保険料や住民税が免除されるわけではないため全額を生活費に充てられるわけではありません。

 なお、高齢者が働きながら年金を受け取る(在職老齢年金)場合、在職中は年金と傷病手当金の調整はありませんが、退職した場合には老齢年金が優先されるため、傷病手当金の日額が老齢年金の日額より大きい場合のみ、その差額を傷病手当金として受けることになります。
退職後に傷病手当金を受給できる場合の要件
 ここで、前述の退職後の傷病手当金について確認しておきましょう。退職して健康保険の被保険者資格を喪失すると、原則として傷病手当金は受給できません。ただし、以下の要件を満たせば、退職後も引き続き傷病手当金を受給できます。
退職までに被保険者期間が継続して1年以上あること
退職の前日までに連続して3日以上休業し、退職日も休業していること
失業給付を受けていないこと
退職後も同一の傷病により労務不能であること
労務不能期間が継続していること
 注意したいのが退職日です。「最後ぐらいはきちんと挨拶をして終わりたい」と無理して退職日に出勤すると、退職後の傷病手当金を受給できなくなることがあります。退職を予定している場合は、退職日出社の必要性についても事前に確認しておきましょう。
いざというときのために
 病気やケガは、いつ起こるか分かりません。傷病手当金は、働けない期間の生活を支える重要な制度です。

 ただし、受給には条件があり、請求手続きも必要です。いざというときに慌てないためにも、支給される条件や支給額、請求方法を知っておくとともに、退職後も一定の条件を満たせば受給できることを覚えておきましょう。
岡﨑 一恵(おかざき・かずえ)
社会保険労務士岡崎一恵事務所 代表
社会保険労務士
1級ファイナンシャルプランニング技能士、CFP®認定者

滋賀県大津市出身。同志社大学卒業後、地方銀行の人事部に勤務。
子育てのブランク9年と、紆余曲折の後、社会保険労務士として2018年開業。
2021年CFP®認定者として登録、2023年「くらしとお金のFP相談室」相談員、2024年日本FP協会FP広報センタースタッフを務める。
NPO法人障害年金支援ネットワークに所属。
地元横須賀の中小企業の労務管理と、障害年金代理請求業務、障害年金を受給されるご家庭のライフプラン相談に取り組む。

公式サイト https://www.okazakikazue.net/

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