いわゆる“死後離婚”
2026.10.05
いわゆる“死後離婚”
「死後離婚」という言葉をご存知でしょうか。離婚は夫婦ともに生きていないとできませんから、あくまでも“いわゆる”なのですが、一時期メディアをかなり賑わしました。興味を惹かれる言葉であるせいか、今でもときおり雑誌の見出しなどに登場します。
その正体は、配偶者が死亡した後に姻族関係終了の手続きをとることです。(本物の)離婚の場合は離婚と同時に姻族関係も終了しますが、死別の場合は、姻族関係終了届を提出しないかぎり継続します。
もう少し詳しくご説明しましょう。
その正体は、配偶者が死亡した後に姻族関係終了の手続きをとることです。(本物の)離婚の場合は離婚と同時に姻族関係も終了しますが、死別の場合は、姻族関係終了届を提出しないかぎり継続します。
もう少し詳しくご説明しましょう。
姻族の親族範囲は意外に広い
結婚すると、相手の血族は自身の「姻族」となり、そのうち3親等までが「親族」に加わります。この“配偶者の血族”が今回取り上げる「姻族関係終了」の対象です(図表1の①)。
なお、自身の血族(例えば、子ども)の配偶者も「姻族」ですが、自身の配偶者の生死とは無関係ですので、姻族関係終了の範囲には含まれません(図表1の②)。
なお、自身の血族(例えば、子ども)の配偶者も「姻族」ですが、自身の配偶者の生死とは無関係ですので、姻族関係終了の範囲には含まれません(図表1の②)。
民法第725条(親族の範囲)
次に掲げる者は、親族とする。
一 六親等内の血族
二 配偶者
三 三親等内の姻族
次に掲げる者は、親族とする。
一 六親等内の血族
二 配偶者
三 三親等内の姻族
さて、冒頭でも触れたように、配偶者が死亡しても、義父母など配偶者の血族との姻族関係は消滅しません。義父母と同居して扶養関係にあるケースが典型例だと思いますが、いきなり親族ではなくなってしまうのは現実的ではありません。そこで、姻族関係を継続するか終了するかは、法律で一律に決めるのではなく、本人の意思に委ねられているのです。
しかし、ここで少々気になる問題があります。図表1の①でお分かりのように、姻族のうち親族に該当する範囲は意外に広いのです。配偶者のおじやおば、甥や姪となると、冠婚葬祭以外では会ったこともないという人も少なくないのではないでしょうか。
しかし、ここで少々気になる問題があります。図表1の①でお分かりのように、姻族のうち親族に該当する範囲は意外に広いのです。配偶者のおじやおば、甥や姪となると、冠婚葬祭以外では会ったこともないという人も少なくないのではないでしょうか。
図表1 「姻族」のうち「親族」(主な例)

(※)
配偶者の連れ子は、養子縁組をすれば血族になる。
親族には扶養義務も
さて、「親族」となると、つきあいが煩わしいなどといった話ではすまない問題が生じる場合があります。「扶養義務」です。民法第877条には直系血族と兄弟姉妹に相互の扶養義務があると定められています。しかし、さらに特別の事情があるときは、家庭裁判所が3親等内の親族に扶養義務を負わせることができるとしています。もっとも、“特別な事情があるとき”に限られますし、その場合でも、求められるのは余力のある範囲での援助です。とはいえ、扶養義務が生じる可能性があるわけで、親族になるということは、それなりに重いことだと言えるでしょう。自分が選んだのは配偶者だけなのに、親族は否応なくできてしまうのです。
民法第877条(扶養義務者)
直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。
2
家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合のほか、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。
3
(略)
姻族関係終了届の件数がじわり増加
配偶者が死亡した後、姻族との関係を終了したいときは、本籍地か居住地、一時滞在地の市区町村役場に「姻族関係終了届」を提出するだけで、その望みは叶います。この届け出は自分だけの意思ででき、姻族の承諾は一切不要です。保証人も必要ありません。逆に、仮に姻族側が姻族関係の終了を望んだとしても、姻族側から届を出すことはできません。
姻族関係終了届の件数には2010年代後半に一つの山が見られました。「死後離婚」という言葉が注目された時期です。その後一旦落ち着きましたが、昨今再び増加する気配が見られます。次回は、その原因や姻族関係終了届の効果や注意点について考えてみたいと思います。
姻族関係終了届の件数には2010年代後半に一つの山が見られました。「死後離婚」という言葉が注目された時期です。その後一旦落ち着きましたが、昨今再び増加する気配が見られます。次回は、その原因や姻族関係終了届の効果や注意点について考えてみたいと思います。
図表2 姻族関係終了届の件数推移

出所)
法務省「戸籍統計」をもとに作成
参考:

森 義博(もり・よしひろ)
公益財団法人ダイヤ高齢社会研究財団 シニアアドバイザー
CFP®、1級FP技能士、1級DCプランナー、ジェロントロジー・マイスター
1958年横浜市生まれ。大学卒業後、国内大手生命保険会社入社、2001年から同グループの研究所で少子高齢化問題、公的年金制度、確定拠出年金、仕事と介護の両立問題などを研究。2015年ダイヤ高齢社会研究財団に出向し研究を継続。2024年4月から現職。
趣味はピアノ演奏と国内旅行(とくにローカル鉄道)。
CFP®、1級FP技能士、1級DCプランナー、ジェロントロジー・マイスター
1958年横浜市生まれ。大学卒業後、国内大手生命保険会社入社、2001年から同グループの研究所で少子高齢化問題、公的年金制度、確定拠出年金、仕事と介護の両立問題などを研究。2015年ダイヤ高齢社会研究財団に出向し研究を継続。2024年4月から現職。
趣味はピアノ演奏と国内旅行(とくにローカル鉄道)。






