金融庁「令和9年度税制改正要望」

常國 誠一郎
2026.10.29

 例年どおりであれば、12月中旬に次年度の税制改正大綱が公表されます。大綱が公表されたら、日々の実務にどう反映させるか準備を始めることになると思います。今回は、金融庁の「令和9年度税制改正要望」のうち、3つを取り上げます。
①生命保険料控除(子育て世帯の上乗せ措置)の恒久化
 令和8年分および令和9年分の所得税について、23歳未満の扶養親族がいる場合には、一般生命保険料控除の所得税の限度額が4万円から6万円に引き上げられています。昨年の令和8年度税制改正では、恒久化の要望はあったものの、「1年延長」にとどまりました。

 金融庁は適用対象を約990万人と見込んでいます。共働き世帯では、夫婦それぞれが適用を受けることができますので、年末調整や確定申告で「漏れ」が起きないように注意しなければいけません。
②NISAの利便性向上
 金融庁は、売却した分の枠を翌年ではなく売却した年のうちに復活・再利用できるよう求めています。新NISAがスタートしたのは2024年で、年間上限の360万円まで毎年投資した方は2028年に非課税限度額の1,800万円に到達するわけですが、2029年に保有する株式等を売却しても、その年中は買い直すことはできないという問題が生じます。

 金融機関のシステム改修の期間を考えると、来年からすぐに施行されることはないと思われますが、改正されれば、利便性が向上するのは間違いありません。お客さまとの会話では、変額保険や外貨建て保険と比較される場面を想定し、話法を再構築しておく必要があるかもしれません。
③取得費加算の特例の明確化
 相続した土地・建物・株式などの財産を相続税の申告期限から3年以内に譲渡した場合、相続税額の一定金額を譲渡資産の取得費に加算することができる特例があります。今回の要望は、投資信託の解約の場合にも、この特例が適用できることを明確化するものです。

 現在は、相続税の納付のために投資信託を現金化するという行為でも、買取請求であれば特例が適用されますが、主流である解約請求の場合は、適用を受けられるかどうかが条文上明確になっていません。相続により取得した投資信託を解約して、納税資金や生活資金に充当する方にとっては、手続きの違いで税負担が変わってしまう不公平が解消されるため、実務上の意義は小さくはないと思われます。

 今回取り上げた3つは、お客さまへの説明に直結する内容ですので、12月の大綱でどのように扱われるかを確認しておきたいところです。なお、すべての項目が実際の税制改正大綱に反映されるわけではないことをご了承ください。
参考:
(セールス手帖社 常國誠一郎)

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