コロナ禍で副業希望者、昨年より増加

庄司 英尚
2020.11.02

コロナ感染拡大を受けて副業への意欲高まる53%が回答
 エン・ジャパンは10月12日、「副業」実態調査結果を発表した。この調査は、自社サイトの「エン転職」上で、ユーザーを対象に副業に関するアンケートを実施し、6,325名から回答を得たもの。
 調査結果によると、「現在、副業を希望していますか?」と伺ったところ、49%が「希望している」(非常に希望している:24%、やや希望している:25%)と回答した。昨年の調査より希望者は8ポイントアップしている。しかし、副業を希望する人の割合が増える一方で、現在勤めている会社で副業が認められていると答えたのは、27%にとどまっているのが実情である。
 また、「新型コロナウイルスの感染拡大を受け、副業への意欲は高まりましたか?」と伺ったところ、53%が「副業への意欲は高まった」と回答している。オンラインでできる仕事が増えて、今まで以上に副業を有効活用しやすくなっていることも関係しているとみられる。副業を希望する人の声として、「景気が悪くなったときにボーナスに大きく響くので、いざというときの貯蓄用に副業をしておきたい」というようなものもある。会社側もこのような考えを持っている人が増えてきていることを理解したうえで対応を考えていく必要がある。
副業を希望する理由「失業したときの保険」増加
 副業希望者に対して希望する理由を伺ったところ、「収入を増やしたい」(88%)が最多となった。これは昨年同様であるが、目立ったところでは、「失業したときの保険」と回答した割合は22%と、昨年より8ポイントも増加しており、新型コロナウイルス感染拡大の影響が色濃く出ていると考えられる。
 実際に将来の仕事に対して不安を抱く人が多いのは確かであり、賞与減額や解雇、倒産のニュースが増えれば、さらにこの傾向は強くなってくるであろう。会社が副業を容認し、細かいルール作りをしていくのが望ましいといえる。
厚労省は、副業・兼業の促進に力を入れている
 厚生労働省は「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を発表しており、その中で企業の対応について以下のように見解を述べ、副業・兼業の解禁を促している。
 裁判例を踏まえれば、原則、副業・兼業を認める方向とすることが適当である。副業・兼業を禁止、一律許可制にしている企業は、副業・兼業が自社での業務に支障をもたらすものかどうかを今一度精査したうえで、そのような事情がなければ、労働時間以外の時間については、労働者の希望に応じて、原則、副業・兼業を認める方向で検討することが求められる。
 副業を全面的に禁止すれば会社に黙って副業に従事する従業員もいるかもしれない。その結果として本業に支障が出たりする可能性もあるし、過重労働で体調を壊す可能性もある。
 各企業の人事労務関連の担当者は、従業員の働き方が大きく変化し、仕事への価値観も時代とともに変わってきていることをよく理解して、コロナ禍ではさらに柔軟な対応をしていかなければならない。
 副業への対応の遅れは、優秀な社員ほど社外へ流出するきっかけになりやすく、会社としては大きな損害になる。副業により人間関係が広がり、知見、視野も広がって本業へのプラスになるというメリットもあるので、慣例的に禁止にしてきた会社は、従業員の視点に立って再度、副業に関する自社の方針について見直す必要があるのではないだろうか。
参照:
庄司 英尚(しょうじ・ひでたか)
株式会社アイウェーブ代表取締役、アイウェーブ社労士事務所 代表
社会保険労務士 人事コンサルタント

福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所(現・アイウェーブ社労士事務所)を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続き及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。

公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/

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