12月は個人事業者の決算月!消費税の届出に要注意

木下 洋子
2020.11.12

免税事業者が課税事業者を選択して、消費税を取り戻す
 個人事業者が今年中に税務署に提出することによって、今年または来年の確定申告でメリットを受けることができる消費税の届出を紹介する。
 2019年の課税売上高が1,000万円以下である事業者は、原則、来年の2021年は消費税の免税事業者となり消費税の納税義務が免除される。しかし、多額の設備投資を来年予定している場合などは、あえて消費税の課税事業者を選択することにより、消費税の還付を受けることができる可能性がある。
 来年に課税事業者になるためには、「消費税課税事業者選択届出書」を今年中に税務署に提出することが必要だ。
 なお、今年開業した個人事業者が年末までにこの届出書を提出すれば、今年から課税事業者となることができ、開業費用などのイニシャルコスト等で支払った消費税の一部を2020年分の確定申告で取り戻すことができるかもしれない。
 逆に、「消費税課税事業者選択届出書」を提出して課税事業者を選択した事業者が、その選択をやめようするときには、「消費税課税事業者選択不適用届出書」を、選択をやめようとする年の前年末までに提出する必要がある。
 ただし、課税事業者を選択すると、原則として課税事業者となった年から2年間は、免税事業者となることはできない。また、課税事業者を選択したものが税抜き100万円以上の一定の固定資産、または税抜き1,000万円以上の棚卸資産、固定資産で一定のもの等を購入して消費税の申告を一般課税で行った場合にも、その年の翌年から2年間は原則として納税義務が免除されないうえに、さらに、簡易課税制度も選択できない。購入時に還付を受けた消費税額が3年目に調整されて、納付となる可能性があるので注意が必要である。
一般課税か、簡易課税か、より有利な方法を選ぶ
 2019年の課税売上高が5,000万円以下である個人事業者は、今年中に「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出することにより、来年からは、一般課税という原則的な消費税の計算方法にかえて、簡易課税という「簡易」な計算方法で消費税の確定申告を行うことができる。一般課税を選択するか簡易課税を選択するかで、同じ決算数字でも消費税の納税額が異なる結果となるので、経理事務の負担も含め、どちらの方法を選択したほうが得か検討する必要がある。
 ただし、簡易課税制度を選択した事業者は、2年間継続した後でなければ、選択をやめることはできない。また、多額に設備投資を行った場合であっても、消費税の還付を受けることができないので注意を要する。
新型コロナウイルス感染症の影響を受けている事業者は、提出期限の特例あり
 新型コロナウイルス感染症等の影響により、 令和2年2月1日から令和3年1月31日までの間のうち 任意の1か月以上の期間の事業としての収入が、 著しく減少(前年同期比概ね50%以上)している事業者に対しては、課税事業者の選択・変更に係る届出の提出期限について特例が設けられている。
 また、簡易課税制度の適用についても別途、特例が設けられている。
 慌ただしい年の瀬だが、今年の実績と来年の経営計画を勘案のうえ、消費税に係る届出の要否の検討が必要かと思う。
参考:
木下 洋子(きのした・ひろこ)
マネーコンシェルジュ税理士法人

群馬県出身。大学卒業後、会計事務所勤務を経て現法人へ。法人成り支援や節税対策・赤字対策など、中小企業経営者の参謀役を目指し、活動中。年に数回の小冊子発行など、事務所全体で執筆活動にも力を入れている。趣味はピアノを弾くこと。

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