個人に対して国等から支給された助成金の取扱い

浅野 宗玄
2020.11.16

 新型コロナウイルス感染症等の影響に伴い、国や地方公共団体から個人に対して助成金が支給されることがある。例えば、新型コロナウイルス感染症対応休業支援金や特別定額給付金、子育て世帯への臨時特別給付金、事業所得者向けの持続化給付金、家賃支援給付金などがあるが、こうした助成金は所得税の課税対象となるのだろうか。国や地方公共団体からの助成金については、個別の助成金の事実関係によって、課税関係が異なる。
非課税となる助成金
 非課税となる助成金(助成金には、商品券などの金銭以外の経済的利益を含む)には、助成金の支給の根拠となる法令等の規定により、非課税所得とされるもの(特別定額給付金など)、また、その助成金が学資として支給される学生支援緊急給付金や、心身又は資産に加えられた損害について支給を受ける相当の見舞金(新型コロナ感染症対応従事者への慰労金など)に該当するなどして、所得税法の規定により、非課税所得とされるものがある。
事業所得等として課税される助成金
 一方、上記の非課税所得となる助成金以外の助成金については、次のいずれかの所得として課税対象になる。まず、事業所得等に区分されるものとして、事業に関連して支給される助成金(例えば、事業所得者向けの持続可給付金や家賃支援給付金、文化芸術・スポーツ活動の継続支援、雇用調整助成金など)がある。ただし、補償金の支給額を含めた1年間の収入から経費を差し引いた収支が赤字となる場合などには、税負担は生じない。
一時所得として課税される助成金
 次に、一時所得に区分されるものとして、例えば、事業に関連しない助成金で臨時的に一定の所得水準以下の者に対して一時に支給される助成金がある。例えば、給与所得者向けの持続化給付金やGoToキャンペーン事業における給付金などが該当する。一時所得については、所得金額の計算上、50万円の特別控除が適用されることから、他の一時所得とされる金額との合計額が50万円を超えない限り、課税対象にならない。
雑所得として課税される助成金
 また、事業所得等や一時所得に該当しない雑所得に区分される助成金がある。例えば、雑所得者向けの持続化給付金だ。一般的な給与所得者については、給与所得以外の所得が20万円以下である場合には、確定申告不要とされる。なお、事業所得等の金額の計算では、「総収入金額」から「必要経費」を差し引くこととされており、各種給付金等の申請手続きに際して発生した費用(行政書士に対する報酬料金など)は、この必要経費に該当する。
浅野 宗玄(あさの・むねはる)
株式会社タックス・コム代表取締役
税金ジャーナリスト

1948年生まれ。税務・経営関連専門誌の編集を経て、2000年に株式会社タックス・コムを設立。同社代表、ジャーナリストとしても週刊誌等に執筆。著書に『住基ネットとプライバシー問題』(中央経済社)など。
http://www.taxcom.co.jp/
○タックス・コム企画・編集の新刊書籍『生命保険法人契約を考える』
http://www.taxcom.co.jp/seimeihoujin/index.php

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