在宅勤務導入企業の2割が毎月手当を支給

庄司 英尚
2021.01.25

在宅勤務手当、3千円以上5千円未満が約4割
 政府が緊急事態宣言を発出したことにより、企業はこれまでよりもテレワークの割合を増やす方向で動いているようだ。中小企業においても、前回の緊急事態宣言後にテレワークの導入を検討するところが徐々にではあるが増えており、テレワークの制度や各規程を整備しながら並行して導入を進めているところもあった。

 企業としてはテレワーク導入を進めるうえで従業員へどのような支援をしていくのが望ましいか常に気になるところであり、その内容や金額などについて他社の事例を参考にしたいと思っている。そんな中でエンワールド・ジャパン株式会社が、外資系企業とグローバルにビジネスを展開する日系企業を対象に「在宅勤務における企業の従業員サポート調査」(回答数:269社)を実施、その結果を公表している。

 全社員または一部社員に「在宅勤務を導入」している企業に在宅勤務手当を支給しているか伺ったところ、全体では20%が「毎月、支給している」と回答している(外資系企業では21%、日系企業では20%)。

 「毎月、支給している」と回答した企業に手当の金額を伺うと、もっとも多かった金額帯は、外資系企業では「3,000円以上~5,000円未満」(41%)、日系企業では「5,000円以上~10,000円未満」(39%) であった。全体で見ると「3,000円以上~5,000円未満」(38%)、「5,000円以上~10,000円未満」(37%)という結果となった。

 「10,000円以上」と回答した企業を外資系企業(6%)と日系企業(17%)で比較すると、日系企業のほうが11ポイント高くなった。また、毎月の支給ではなく「一時金(単発)を支給した」と回答したのは7%で、最も多い支給額は「10,000円以上~50,000円未満」(回答企業の53%)であった。
約3分の2の企業が「定期代の支給」を停止
 テレワークの導入に伴って在宅勤務手当とともに検討されるのが通勤手当であるが、見直しが進んでいることが明らかになった。調査結果によると、通勤手当については65%の企業が「定期購入費用の支給を停止、出勤日数に応じて支払い」と回答(外資系企業では67%、日系企業では62%)。通勤する日数が少なくなれば実態にあわせて通勤手当を支払うのは適正であって、その浮いた金額分を従業員が快適にテレワーク勤務できるようにするための環境整備に投資し、さらに一時金や手当として還元することができれば従業員の満足度も高まるので他社の事例と比較検討して見劣りしない程度にしておくべきであろう。

 テレワーク勤務への対応が進んでいない、あるいは環境面の整備が遅れていると働きにくい環境であると判断され、将来的には従業員の離職にもつながることが考えられるので早急に他社の状況などを参考にしながら改善していくのが良いだろう。

 変化への柔軟な対応力は、このような緊急事態宣言の下では如実に企業間格差が現れるのでモチベーションアップ、生産性アップのためにも実際にテレワークをしている従業員の意見をよく聞きながら、そのニーズをしっかり理解して、早急に改善に取り組むことが理想的である。
参照:
庄司 英尚(しょうじ・ひでたか)
株式会社アイウェーブ代表取締役、アイウェーブ社労士事務所 代表
社会保険労務士 人事コンサルタント

福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所(現・アイウェーブ社労士事務所)を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続き及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。

公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/

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