テレワーク導入費用は「支給」「貸与」で異なる課税

浅野 宗玄
2021.01.25

「支給」した場合は原則現物給与として課税の対象
 新型コロナウイルス感染症の対策や働き方改革の一環として、テレワークやリモートワークでの在宅勤務を導入する企業が急増している。そのため従業員は、自宅で職場と同様の環境で仕事ができるよう通信環境の整備や作業スペースを整える必要があり、従業員の経済的負担も増えることになる。

 企業側は、従業員が自宅でも効率的に仕事ができるように、業務に欠かせない物品を全額負担して用意することが検討項目になってくる。

 そこで、企業側が、通信環境の整備等業務に必要なPCやモニター等のICT機器や椅子などの器具備品などを会社の負担で用意し、従業員に「支給」した場合の課税関係はどのようになるのだろうか。

 給与所得を有するものがその使用者から受ける金銭以外の物(経済的な利益を含む)でその職務の性質上欠くことのできないものとして、所得税法関連の政令で定めるものは非課税所得となっている。しかし、その政令で定めるものの中にはテレワークで必要とされる物品は明記されていないことから、非課税対象にならないので、原則現物給与として課税の対象となる。
「貸与」の場合、課税関係は発生せず
 では、会社にある備品や必要な物品を購入して従業員に「貸与」して、テレワークのためだけに使用した場合はどうなるのか。「貸与」の場合は、資産の所有権は会社側にあり、従業員には返却の義務があることから、課税関係は発生しない。

 ただし、税務調査等で現物給与として指摘されないためにも、業務で使用するために会社が従業員に「貸与」していること、テレワークにしか使用しないことを明らかにしておく必要がある。そのため、税務上指摘されないように台帳や規程を作って一定の管理を行うことが勧められる。

 以上のように、テレワーク導入費用は、会社からの「支給」であれば現物給与として課税、「貸与」の場合は課税関係が発生しないとされる。
通信費や光熱費などの費用については注意が必要!
 なお、自宅で通常の業務を行うとすれば通信費や光熱費などが発生するが、その費用について、会社が「在宅勤務手当」として一定額を「支給」する場合は、「在宅勤務手当」は使途自由の資金として支給されるため給与課税の対象となる。

 一方、実費精算する場合は、従業員が業務の使用量に応じて通信費や光熱費などの明細を提示し実費精算するので、従業員が会社の負担すべき費用を立て替えたにすぎないため、給与課税は生じないとされる。
浅野 宗玄(あさの・むねはる)
株式会社タックス・コム代表取締役
税金ジャーナリスト

1948年生まれ。税務・経営関連専門誌の編集を経て、2000年に株式会社タックス・コムを設立。同社代表、ジャーナリストとしても週刊誌等に執筆。著書に『住基ネットとプライバシー問題』(中央経済社)など。
http://www.taxcom.co.jp/
○タックス・コム企画・編集の新刊書籍『生命保険法人契約を考える』
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